「消費税減税したら、地方が1兆6000億円も減収」
24年秋、札幌市が敬老パスの見直しをめぐって開いた市民説明会でのことだ。
報道によれば、20代の男性が「現役世代の声も聞いてほしい」と発言すると、会場の高齢者から「続けているところの方が多いよ」「君も年取るぞ」とヤジが飛び、司会が二度制止する一幕があったという。
問いかけた若者に返ってきたのは、議論ではなく、数の力による恫喝だった。
一度配られた給付は既得権になり、見直し案が出たら「民主主義の力」で押し返す。同じ「数の力」を背にして、政府側からも声が飛ぶ。「消費税減税したら、地方が1兆6000億円も減収するぞ」と。
「1.6兆円」の正体を見る
物価高にあえぐ世論を受けて、高市政権は食料品の消費税率を一時的に1%へ下げる案を検討している。実現すれば初の消費税減税だ。この議論に冷や水を浴びせたのが、総務相の林芳正議員である。
彼は衆院予算委員会で、食料品の税率を8%から1%に下げれば地方の減収は1兆6000億円程度になる、との試算を持ち出した。「これだけ地方の財源が失われる」という、減税をけん制する数字だ。
数字は大きい。大きいから効く。「1.6兆円」と言われれば、たいていの人はそこで口をつぐむ。
だが、待ってほしい。この1.6兆円はどこかへ消えるカネではない。役所に入らなくなった分は、そっくり住民の財布に残る。社会から1.6兆円が蒸発するわけではなく、役所の取り分が住民の手元へ戻るだけの話である。
元々は住民から取り上げたカネだ。地方が疲弊していると総務相は言うが、地方が疲弊しているのは、住民や企業が消費税で年々吸い上げられているからにほかならない。













