井田奈穂氏(左)と中村敏子氏
井田奈穂氏(左)と中村敏子氏
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必要な知識はすべてこの本に入っている

井田 今回、先生が書かれた『選択的夫婦別姓はなぜ日本を変えるのか』を拝読して最初に思ったのは、「8年前にこの本を読みたかった!」ということです。私は2018年から選択的夫婦別姓の実現を目指して活動していますが、最初はあまり知識がないまま、国会議員に陳情に行ったりしていました。

そうすると、「夫婦別姓にしたら日本という国が壊れる」といった自説を展開され、「単に生活上の困りごとをなんとかしてほしいと言っているだけなのに、なぜ『国が壊れる』なんて話になるの?」と、戸惑うことが多かったんです。

あまりに議論が噛み合わないので、ある議員に「どうして選択的夫婦別姓を導入してはダメなんですか?」と単刀直入に聞いてみたところ、「女性にも男性と同じ権利があることに国民が気づいてしまうからだ」と真顔で言われて、びっくりしたこともあります。

そういうわけがわからない場面に遭遇する度、「これって、どういうことですか?」と法律の専門家に教わりながら、何を言われても反論できるようにしてきました。

この本には、私がそうやってパッチワーク的に身につけた知識が全部、体系的にまとまった形で入っています。「これがあれば、ずっと効率的に動くことができたのに」と、過去の自分に教えてあげたいですし、今回の本を読んで、近代以降の日本の為政者たちが女性の扱いについてどう考えてきたか、その歴史を知る必要があるんだなと改めて痛感しました。ジェンダー平等に関心がある人にとって、必読書だと思います。

中村 「知識がなかった」とおっしゃるけれど、それは仕方ないと思いますよ。私の学生時代はフェミニズム全盛期で、「夫婦別姓が必要だ」「自分の姓を変えたくない」という考えは、私も50年前からずっと持っていました。でも井田さんと同じように、それはあくまで個人の問題だと捉えていたわけですね。今回の本を執筆するときにいろいろ勉強して初めて、「夫婦別姓は国家の問題だ」と気づくことができました。

これは、私が政治学者で、「国家」という枠組みを前提にして考えたから見えてきたことだと思います。どういうことかというと、近代国家の原点は「国民は皆、自由で平等であるべきだ」というところにあるのに、女性にはその原則が当てはめられていないわけですね。

なぜそうなったのか、政治学の概念を使って考えてみたら、夫婦別姓の問題が立ち上がってきた、というのが今回の本なんです。

井田 私自身、まさか国家の成り立ちに自分が足を踏み入れていたなんて思いもしませんでしたから、読みながら「そうだったのか!」と衝撃を受けました。

中村 夫婦別姓と国家のあり方が繋がっているという観点からすれば、「国が壊れる」というのは、ある意味、正しいんです。

井田 「国」が何を指しているか、というところですよね。選択的夫婦別姓に反対する人たちが言う「国」は、たぶん明治から終戦直後、1947年の民法改正までの日本なのだと思います。