議論を呼んだ八村のあの発言
「日本代表のチームがどこに水準を合わせるかというと、一番高いところに合わせるべきだと思います。現在の日本で一番水準が高いのは八村塁ですよね」
日本バスケットボール協会(JBA)強化委員長の伊藤拓摩は、そう話す。もっとも、八村塁という一人のスター選手を特別視したいという意味ではない。
彼のようにNBAで活躍するレベルの選手が来たときに、バスケットボールに集中できる環境を整える。それが、伊藤の考える組織の「水準」なのだ。それは世界基準に合わせるとも言い換えられる。
伊藤は長崎ヴェルカの代表取締役社長兼GM(ゼネラルマネージャー)を務めながら、2025年秋からJBA強化委員長、そして男子日本代表のダイレクターを兼任している。
アルバルク東京のヘッドコーチ(HC)を経て、NBAの下部リーグ・Gリーグのテキサス・レジェンズでも指導経験を積んだ、日米両方のバスケットボール界を知る人物だ。
2024年パリ五輪が終わったあとに、当時のトム・ホーバスHC体制下の代表強化について、八村は選手を最優先する姿勢が感じられないという趣旨の率直な意見を公の場で口にしていた。世界最高峰の舞台で戦う選手だからこそ見えていた景色があったのだろう。以来、八村はしばらく代表活動から距離を置いていた。
だが、今年8月、八村は日本代表の合宿に合流する直前、新体制のコーチ陣についてこう語っている。
「コーチ陣が世界で戦えるレベルで教えてくれると思うので、僕としても日本代表に戻って、やりたいという気持ちになった」
さらに、チームの映像を見た印象についても、「見ていて楽しい、僕がやりたいバスケットをしていた」と、これまでにない日本代表のスタイルを高く評価したという。
この2年間で、何が変わったのか。伊藤がJBA強化委員長に就任したのは、ついこの間の、2025年秋のことだった。パリ五輪までのJBAの体制を変革する仕事を託された。













