A氏はプロパー職員「通帳から印鑑まで全般の管理が可能だった」

6年近く金の抜き出しに気づけなかった結果は甚大で、同会の財政は火の車になっている。

天羽啓常務理事の説明では、2025年度に道内の募金額は約6億7000万円あり、うち約1億4000万円は25年度中に助成金で配布されている。

残る約5億3000万円のうち約3億4000万円は今年度に福祉・支援団体へ助成し、約1億9000万円は同会と道内に179ある共同募金委員会の事業費に充てる計画だった。

北海道共同募金会の助成事業(同会HP)
北海道共同募金会の助成事業(同会HP)

ところがここから約1億8000万円が足りないことが年度末になって発覚したのだ。瀬尾会長は、

「事務費の削減や取り崩せる積立金などを検討し今年度実施される福祉事業への助成として当初予定していた額のうち約5割の交付を早急に行う予定です」

と説明。懲戒解雇と刑事告訴を検討するA氏に対しては、損害賠償を求める考えを明らかにした。だが着服分を回収し、残る半分の助成を行える展望はない。

そもそもなぜこのような巨額の不正会計が可能だったのか。

A氏は1991年に同会に入ったプロパー職員で、2010年に事務局次長になったころから事実上会計を一人で担い、2022年に事務局長に昇格した。「会計責任者という立場で、通帳から印鑑まで全般の管理が可能だった」(天羽常務理事)という。

北海道共同募金会が6月14日にホームページに掲載した事件の説明
北海道共同募金会が6月14日にホームページに掲載した事件の説明

支出は会計責任者の了承が必要だとする経理規定があるものの、

「会計責任者が当該人物(A氏)だということもあり本来の手続きが形骸化していた」

と天羽常務理事は話す。チェック機能はなかったに等しい。

A氏は問題発覚後、「申し訳ないことをした」「いずれちゃんとお詫びをしたい」と口にするいっぽう、弁護士を代理人につけ、募金会の事情聴取の求めには「刑事事件に関わる」として応じていないという。

不正会計を見抜けなかった会計士も問題発覚後の4月に辞任。募金会は不正の経緯を自力で検証することもできない状況だ。