「訓練データにはゴミが多すぎる」というマスクの嘆き
メカヒトラー事件のあと、xAIは再び対策を講じることを誓った。しかしこの一件からは、AIシステムの政治性を正確に調整する難しさが浮き彫りになった。
2025年9月に発表された『ニューヨーク・タイムズ』紙の調査では、あるパターンが明らかになった。マスクがGrokの過剰な「ウォークネス」に腹を立てるたびにコードが変更され、それが極端な暴走の要因となっていたのである。
2025年6月、Grokは右翼の暴力が左翼の暴力よりも多くのアメリカ人の命を奪ってきたと客観的な事実を答えたが、あるユーザーがこの回答を問題だとしてマスクに報告した。マスクは返信で対応を約束した。
その翌月、xAIはGrokへの指示を更新し、チャットボットに「政治的に正しくない」返答をするように教えた。その直後、Grokはメカヒトラーへと変身していたのだった。
マスクの表現を借りれば「頭の弱いウォークなリベラル軟弱男」と「メカヒトラー」のあいだの道を見つけるのは難易度の高いことだった。「基盤モデルのレベルにすら流れ込んでくるゴミが多すぎる」からだとマスクは嘆いている――つまり訓練データにゴミが多すぎるというわけだ。
将来的に「インターネット全体をそのまま訓練に使うのではなく、もっと厳選して利用する」と約束した。
ここでマスクが露わにしていたのは、自らが作った機械の硬直性に対する苛立ちだった。
「サイバネティクス」という用語は、ギリシャ語の「操舵手」に由来する。その生みの親であるコンピュータ科学者のノーバート・ウィーナーがこの用語で示そうとしていたのは、人間、動物、そして最終的には機械の自己調整的な指揮統制メカニズムだった。しかしマスクは自己調整に満足しなかった。もっと自分の手で舵をとることを望んだのだ。













