マスクと日本の「メカ」との意外な接点

これは1992年に発売されたシューティングゲーム「ウルフェンシュタイン3D」に登場するキャラクターへのオマージュだった。このゲームでは、大きなメカスーツを着たアドルフ・ヒトラーと戦うことになる。

しかしメカヒトラーがマスクの視点からしてもっと重要だったのは、思春期に観ていた日本アニメの「メカ」を思い起こさせる姿であったことだ。

日本の作品を原作とし、アメリカで制作されたアニメ「ロボテック」は、少年時代のマスクが住んでいた南アフリカで1986年に放送された。作品中には、戦闘機を人間が搭乗する人型ロボットに変形させる技術が登場した。

こうした兵器は「メカ(mech)」と呼ばれている。「mechanical」に由来する日本語の「メカ(mecha)」の略語である。メカは日本のアニメやマンガにおいて高い人気を誇る要素だった。

この「メカ」が2010年代半ばに現れた「機械と融合せよ」というマスキズムにおける至上命題の象徴だったとすれば、「メカヒトラー」はその至上命題が2020年代半ばに行き着いた姿の象徴だった。

過去にもマイクロソフトのチャットボットがナチス化

マスクはウォーク・マインド・ウイルスの存在を踏まえ、そこからの汚染を防ぐためにサイボーグ的統合を慎重に管理すべきだと考えるようになった。だが厳密に言えば、チャットボットのナチス化は新しい現象ではなかった。

生成AIブームが起こるずっと前の2016年、マイクロソフトは「Tay(テイ)」という名のチャットボットを公開したことがあった。ノリの軽い皮肉屋のティーンエイジャーという設定のTayは、数時間のうちにナチス的な発言を繰り返すようになってしまった。

マスクは当時、「ヒトラーに到達するまでの時間」が不気味なほど短いと指摘していた。Tayがナチス化したことは、「インターネットはウォークネスに満ちている」というマスクの恐れとは逆に、ネットにはAIが極右政治を学習するのに十分すぎるほどの材料が存在していることを示していたと言える。