情報の空白は、デマで埋まる

ナフサ原料のごみ袋が品薄状態、特例で「指定外でもOK」の自治体が相次いでいる。環境省は「買いだめ控えて」とも
ナフサ原料のごみ袋が品薄状態、特例で「指定外でもOK」の自治体が相次いでいる。環境省は「買いだめ控えて」とも

無理に情報統制しようとすればするほど、真逆の情報が乱立し、かえって人々の不安と混乱を増幅させる。情報の空白は、デマで埋まる。デマが生まれやすいのは偶然ではない。

民主主義が機能するための第一の条件は「公開による透明性」だ。情報を管理すれば短期的に混乱は防げるかもしれない。しかし人々は受動的になり、やがてすべてを政府に依存するようになる。

自分で考えることをやめた社会は、次の危機に対してさらに脆くなる。税と社会保険料に所得の半分近くが消えていく国で、さらにコスト上昇分を価格に転嫁しろというのか。

民間企業が苦しむ構造も、政府が情報を抱え込む構造も、根は同じだ。「国民自身がやるか、政府が管理してやるか」という問いである。

政府が情報を管理的に分配する社会では、国民の判断力は育たない。正確な情報が開示されてはじめて、人は自分の頭で考え、自分の足で動ける。パニックになろうが何しようが、まず情報は公開するべきだ。それが民主主義の出発点である。

民主主義とは、すべての国民が政治に参加する平等な権利を持ち、自らの生活に関わる事項を自分で選択できる仕組みだ。そのためには、判断の根拠となる情報と知識が必要であり、自分の考えを政治に反映させる機会が保障されなければならない。

情報の公開は、その大前提である。「足りています」の一言で思考を止めさせることは、民主主義の根幹を侵食する。

政府にしかできないことをやれ

とはいえ、情報公開と民間の努力だけでは越えられない壁がある。SNSが乱立する情報の混乱を見れば、「情報統制派」の敗北はすでに明らかだ。

しかし「情報公開派」が勝利したわけでもない。正確な情報がなければ、判断しようがないからだ。結局どちらの側も満足のいかない結果になっている。

エチレン生産設備の稼働率が67.3%まで落ちた根本原因は、ホルムズ海峡が封鎖されているからだ。代替調達が進んでも輸入単価は1.6倍。在庫が積み上がっても、それは消費されるだけだ。ヒアリングをいくら丁寧にやっても、補助金をいくら積み上げても、蛇口が閉まった状態では根本解決にならない。

政府が本当にやるべきことは、その蛇口を開けることだ。つまり和平外交である。

自由な貿易のできる世界を取り戻すこと。それは外交権を持つ政府にしかできない、そして今政府に最も求められている仕事だ。