「お前の野心は綺麗だ」
数々の苦労を経験しながらも、俳優としての成功をつかんだムロ。彼には、郷原のように導いてくれた存在はいたのだろうか。
――ドラマでは様々な印象的なセリフがでてきます。ムロさんご自身が、これまでの俳優人生で背中を押された言葉や大事にしている言葉はありますか。
たくさんありますけど、やっぱり最初にいただいたのは、柄本明さんの「君は間違ってないけど、時間がかかるぞ」という言葉ですね。柄本さんはもう忘れたって言っていますけど(笑)、『東京乾電池』という劇団に関わらせてもらった時にいただきました。
「間違ってないことはやっているんだな」と思えたことで、その後、自分の意思で東京乾電池から離れるんです。誰かが作った劇団の場所にいるよりは、「自分で舞台を作ろう」と。
本当にね、予言通り時間はかかりました(笑)。時間かかりましたけど、なんとか今、こうして皆さんの前で話をできています。
本広克行監督の「お前の野心は綺麗だ」という言葉もそうですね。あれは僕が26歳の時だから、今から24年前ですね。サッカーの本田圭佑さんのように行動と結果で信頼を勝ち取っていた時代。「使ってください」とか「売れたい」などと自ら言うのがダサいというか、そういうことを言わずに結果を出す美学があったんですよね。
そんななか、僕は「使ってください」って言っていたんですよ、いろんな人に。すると、「誰にでも言っていて安いな」みたいことを言われて。
でも本広さんは、「全員にそこまで言うやつはいなかったから、お前の野心に乗ってみる」って言っていただいて。「綺麗だ」というのは、本広さんから「このエピソードを使うなら、うまいこと言った風にしろ」と言われ、加わりました(笑)。でも、「そこまで言うんだったら、じゃあその野心に1回乗ってみる」といっていただいたのはやっぱり嬉しかったです。
「時間はかかるぞ」と予言されたあの日から20余年、数々の縁を力に変えてきたムロツヨシが見せる背中は、どこまでも美しく、そして逞しい。かつて抱いた泥臭い野心さえも品格に変えた彼の第二章はまだ始まったばかり。独自の哲学を胸に、今日もカメラの前に立つ――。
取材・文/羽田健治
撮影/廣瀬靖士
ヘアメイク・池田真希
スタイリスト・森川 雅代














