高市事務所と蜜月関係にあった告発者

その一方で、留意しなければならない点もある。今回の文春報道において、告発者とされている人物の素性だ。

告発者は、サナエトークンの仕掛け人とされる松井健氏である。

筆者は「週刊現代」誌上でこれまで、暗号資産「SANAE TOKEN」問題を追及してきた経緯がある。

現職総理の名を冠したトークンは2月下旬に発表され、一時は時価総額が数十億規模になったとされる。しかし、高市総理が3月2日に関わりを否定したことにより、価格は急落した。

「SANAE TOKEN」(プロジェクトHPより)
「SANAE TOKEN」(プロジェクトHPより)

さらに、トークンの発行元の「NoBorder DAO」が、暗号資産交換業の登録をしていなかったことから、金融庁が実態把握に乗り出したとも報じられた。

その「NoBorder DAO」幹部で、サナエトークンの設計から発行に至る責任者とされる人物が松井氏だ。

高市総理自身は関わりを否定したものの、高市事務所の木下剛志所長らは、松井氏とミーティングなどのやりとりをしてきた経緯がある。

木下氏も以前、筆者の取材に、松井氏が総裁選で「勝手連的に(高市陣営を)支援していた」と認めていた。

ただ、「アカウント名などは把握しておらず、活動の詳細は知らない」とも。松井氏が「文春」で語ったような、選対内部の役割ではなく、あくまで自主的な活動という趣旨なのだろうか。

SANAE TOKENへの関与を否定する高市氏(本人Xより)
SANAE TOKENへの関与を否定する高市氏(本人Xより)

それにしても、高市事務所と蜜月関係にあったはずの松井氏が、なぜ、今になって高市事務所に対する告発を繰り広げているのか? 

背景にあるとされるのが、筆者が「週刊現代」で報じてきた松井氏を巡る複数のトラブルの存在だ。

松井氏は作家・竹田恒泰氏の仮想通貨事業に乗じて、資金を独自に集めたものの、その後、投資家との間で、返金トラブルになっていた。

また、自身が経営する宇宙関連ビジネス企業でも、投資トラブルが発生している。

極めつけは、やはり筆者が「週刊現代」で報じた、サナエトークンを巡る「事前販売疑惑」である。

松井氏は自身が経営する「株式会社neu」の契約者に対して、サナエトークンが分散型取引所(DEX)に流通する前に、優先的に購入・付与されるサービスを提供してきた疑惑だ。文春の取材に饒舌に応じてきた松井氏だが、筆者の再三の取材依頼には応じてこなかった。

高市早苗首相(写真/本人SNSより)
高市早苗首相(写真/本人SNSより)
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いわば未公開株式の取引のようなもので、資金決済法違反の可能性があると指摘されている。霞が関関係者は、筆者の取材にこう本音を漏らす。

「サナエトークンは、暗号資産の無登録販売として資金決済法に直結する問題で、金融当局も関心を持っています。

とはいえ、総理の事務所が関係する話のため、動きづらい部分もあるでしょう。パンドラの箱が開いてしまう可能性もありますから。『総理のことは気にせずに動け』という号令でもあれば話は別かもしれませんが……」(霞が関関係者)

松井氏の言動は、政権の闇を暴く“告発”なのか。それとも、自身への追及を回避するための“牽制球”なのか。「中傷動画問題」とともに、「サナエトークン」問題の徹底調査も待たれる。

取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班