僕ね、コンサートの照明もできるんですよ
──恋の話と並行して、音楽や芸術の発信地となる「ステージバス」の準備が青を中心に着々と進められていますね。
うん、ステージバスの話も出さなきゃならないので、メインの話の邪魔をしないように配分に気を付けて、恋の話と絡めながら、うまく散らして入れ込みました。
──堀田家にはミュージシャンや画家、俳優、作家もいて、ある意味芸術の発信地でもある。小路さんご自身も昔音楽をやっていたわけで、こういう「ステージバス」のような構想は、以前からあったんですか?
それに近いことを実際にやってましたからね。20歳ぐらいのとき、仲間で音楽をやっていたころは、キーボードとかシンセサイザーなどのデジタル楽器が出てきた時代だったんですよ。それで当時の最新のデジタル楽器を借金して買いそろえて、それをアマチュアミュージシャンに貸し出したりしてた。つまり、マンションを借りて、今の音楽事務所みたいなものをつくってビジネスにしていたんですよ。
──へえー。それは初めて聞きました。だからステージバスの運営描写が具体的でリアルなんですね。
短い期間ですけれど。僕自身もコンサート照明の会社でアルバイトをしていたので、僕、照明もできるんですよ。楽器もスタッフもそろえて、僕らの事務所でコンサートができますよというのが売りで。
──じゃあ、そのときのノウハウが小説に役立った。
うん、そのときに、コンサートの呼び屋さんや照明のプロとも付き合いがあったし、いろんな人と関わってやってきたので、その辺のバックグラウンドの経験値は全部、バンドワゴンに入っていますね。音楽だけでなく、その後、僕は広告業界に入ってイベントプランナーになったので、その経験値も役立っていると思います。それこそコンサートもやったし、舞台もやったし、若いころから仕事としていろんなことやってきて、さらにやりたかったこともいっぱいある。ステージバスの構想には、そういう経験から出てきた僕のやりたかった理想みたいなものも入ってると思います。
ホームドラマそのものが「仲間」のお話なんです
──「べらぼう」に刺激を受けたとおっしゃっていましたが、江戸時代は、何かを創作するときは、みんなでああだ、こうだと言って、共同体で文化を発信していましたよね。ああいう雰囲気はステージバスにもつながるのかなと思うんですが。
十分につながるものだと思いますね。そもそもステージバスの発想は、堀田家にはミュージシャンもいるし、作家もいるし、俳優もいるし、いろんな連中がいるんだから、全部まとめちゃえばいいじゃんというところから出てきたものだから、まさに共同体、仲間です。ちょっと前の回で研人に言わせたんですが、堀田家の人々は家族というより仲間だよねという感覚。そういう感覚が研人の中にはあって、その感覚は僕の感覚でもある。
僕の書いてるものは、結局そこに行きつくんですよ。仲間って、基本的に楽しいじゃないですか。そもそもホームドラマ自体、仲間の物語だと思うんですね。一つの家族を中心にして様々な人たちがいっぱい集まってきて、そこで生まれるドラマがホームドラマなのであって、そういうものを書こうと思って書いたのが「東京バンドワゴン」なんですから。
──以前のインタビューでも、ずっと仲間が欲しかったとおっしゃっていましたよね。
そうですね、僕は全然意識してなかったんですけど、子供のころから、仲間というものが本当に欲しかったんだろうなと、書いていて気づかされます。僕の中にあるそういう気持ちが、自然と創る物語の中にも出てきているんだろうなと。「東京バンドワゴン」以外の僕の物語も、振り返ると、ほとんどが仲間がベースになっている話なんですね。もう一つシリーズになっているポプラ社の「花咲小路商店街」も、商店街という仲間のお話になっている。僕はそういうものが好きなんだろうなと思うし、そういうものが書きたい。
──恋愛でも家族関係でも、人間関係の豊かさは、仲間がいることによってつくられている部分がすごくありますよね。
そうですよね。人間の社会自体が共同体ですよね。仲間同士で生きていくのが社会なわけで、そこはきちんと描いていきたい。僕ら表現者がやっているのは、生きる人々の娯楽ですよね。娯楽、楽しみを提供して、それで食わせてもらっている人間としては、そのベースとなる仲間のありようはちゃんと描いていかなきゃならないと思っています。いろんな物語を書く人はいるけれども、その中で僕はとくに仲間ベースの物語を描いていったほうがいいんだろうなと。そのほうが自分も楽しいし、読んだ人にも楽しんでもらえばさらにうれしい。そういうのがいいなとは思いますね。
──小路さんの考える仲間の関係性は、寛容で広いですね。堀田家の人たちも同じですね。今回はロンドンからヤマノウエカップルも仲間に加わったし、毎回ちょっとずつ増えています。その仲間たちとの距離感もべたべたしていなくて、風通しがいい。しかも、生きている人だけでなく、堀田家の守護神でもあるサチという死者の語り部とも温かいきずなでつながっているんですよね。
うん、そうね。そこにいる人たちだけじゃなくて、死んだ人とも仲間としてつながっている。生きていくってそういうことなんだと思う。だから「東京バンドワゴン」が続く限り、仲間というものがずっとベースにあるんだろうなと思います。
──最後になりましたが、主人公の勘一がついに卒寿(90歳)になりました。でも、肉体は60代と書いてあって、まだまだかくしゃくとして事件にも絡んできています。
前から言ってますが、勘一がいつ天国に召されるかは結構肝なんですが、今のところ95歳までは多分大丈夫かなと(笑)。番外編が途中で入ると年は取らないので、勘一が95歳になるまでにはあと7年ぐらいはかかるのかな。
──それまでは「東京バンドワゴン」シリーズは安泰ですね。
いやいや、突然打ち切りになるかもしれないし、ただただ僕は面白い作品を頑張って書いていくだけです。次の第22弾もぜひご期待ください(笑)。
●「東京バンドワゴン」シリーズの既刊情報は、特設サイトでご確認ください。













