僕の描く恋や家族の話にはいつも「仲問」というベースがある『アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド 東京バンドワゴン』小路幸也 インタビュー_1
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今回は全編、「抱きしめたい」恋の話にしよう!

──今回は、各章でいろんな恋愛、結婚事情が展開されて、まさに「LOVEだねぇ」のお話満載ですね。このテーマは、ビートルズの「抱きしめたい」に触発されての発想ですか。

 次のタイトル曲を何にしようと考えるときに、『ビートルズ全詩集』をいつも手元に置いてあるんです。どれにしようかなと思って本を見ていたら、まだ「抱きしめたい」使ってなかった、よし、今回はこのタイトルで、全部恋の話にしたいと。前にも言いましたけど、長いシリーズで大きな事件を起こしちゃうと、次もまた大きな事件、またさらに大きな事件と、どんどん話がインフレしちゃうので、それだけはしないように毎回抑え気味にしています。全編が恋と家族の話であればすーっと流れていけるので、すべての章で恋人同士がくっつく話にしちゃおうということにしました。

──具体的なお話は本編を読んでのお楽しみですが、恋愛とか、結婚とか、妊娠とか、そういう話が5カップルぐらい出てきますね。

 そうですね。妊娠の話は、ちょっと迷いました。妊娠という生々しい話を最後のほうに持ってくるのはどうなのかなと。でも、家族の話だし、そういうのは絶対つきものだろうしなと。かといって、堀田家のメンバーの妊娠騒ぎは今はできないので、誰かいるかなあと思って探したら、ああ、彼らがいるじゃんと思って(笑)。またそういうふうに思いつくとちょうどいい配置になっているんですね。そこはスムーズにいきました。

──そしてシリーズ第16弾、ロンドンが舞台となった『グッバイ・イエロー・ブリック・ロード』で活躍したジュン・ヤマノウエが満を持して登場。彼女の恋話もありつつの、彼女の実家が日本のある家系と深いつながりがあるということが分かってくるというミステリー仕立てになっている。引き込まれますね。

 ジュン・ヤマノウエもいつ出そうかとずっとタイミングを考えていたんですが、彼女が恋人と一緒に暮らすことになって、ハネムーンもどきで来日するということで、うまくつながりました。彼女の実家が日本にあることは分かっていましたから、今はだれも住んでいない実家の由来をきちんと片づけようと思いまして。で、さてどうやって片づけようかなと考えたときに、研人(けんと)のミュージシャン仲間と絡めれば楽しいかなと思いついたんです。

──勘一(かんいち)の岡山旅行に絡んだ恋の話とお寺の古本屋の謎解き話も面白かったです。小路さんの物語には常にこういう仕掛けが用意されているのが楽しいし、読者を飽きさせませんね。

 ありがとうございます。お寺の古本屋の話もずっと温めていて、いつ使おうかと考えていたんですよ。謎解きの話は、あのとき見ていたNHK大河ドラマ「べらぼう」に刺激を受けて、判じ絵とか江戸物を出してみました。ああいうのを考えるのは結構得意なんです。

古時計と、猫と、執筆ときどきふたりで散歩

──NHKといえば、小路さん、昨年12月に放送されたEテレ「ネコメンタリー 猫も、杓子(しゃくし)も。」に出演なさいましたね。猫ちゃんとの暮らしも楽しかったんですけど、小路さんがふだんどういうところで書いていて、どう暮らしているのかがかいま見えてすごく面白かったです。そういう話を今度お会いできたらしたいなと思っていたら、冬の章に丸々出てきました(笑)。

 ああいう狭いところで書いています(笑)。

──狭くないじゃないですか。一軒家ですよね。はりとか、結構高いところがいっぱいあって、猫ちゃんにはすごくいい環境でした。

 スウェーデンハウスというハウスメーカーで、もともとがああいう形なんですよ。「ネコメンタリー」の撮影は、2025年の8月の暑い時季にやったんですが、プロデューサーとディレクターとカメラマン三人でやってきて、5日間、日中から夜まで撮影していました。うちにテレビロケが入ったのは初めてで、なかなか面白かったんですが、動物を撮るカメラマンは大変ですよ。ずーっと猫を追ってますからね。動かない猫を三脚一個で撮っていて、ちょっと動いたと思ったら、すぐさまカメラを手持ちにして低い位置で追っていったりとか、本当にカメラマンは体力が必要だなと思いましたね。それだけでは足りずに、廊下にカメラを仕掛けたり、ディレクターも自分のiPhoneで別の角度から猫の動きを撮っていたりして。

──まさに堀田家も同様の撮影取材を受けることになりますね。

 そのときはまったく思っていなかったんですけど、書き始めてから、そういえばあれネタに使えるじゃないかと思って、そのまま使わさせていただきました(笑)。

──小路さんのお家に、堀田家にありそうな、大きくてかっこいい古時計がありましたね。

 僕の妻の実家が三代続いたそば屋だったんですね。僕らが結婚してしばらくして跡継ぎがいないので閉めちゃったんですが、あれはその店にずーっとかかっていた時計なんですよ。めっちゃ古いんです。

──ねじを巻くんですか?

 そうなんです、ねじを巻くの。ボーン、ボーンという音が遅くなってきたなと思ったら、僕か妻、気づいたほうがねじを回すという感じです。あの部屋に大きなテーブルが置いてあったのもちらっと映ったと思うんですけど、あれもそば屋さんに置いてあったんですね。長さが5メートルぐらいある一枚板のテーブルで。昔ながらのそば屋さんによくあるどっしりとしたやつ。一枚板だからめちゃくちゃ重くて2階の床が傾いちゃいました。

──執筆の合間に、雄大な田園風景の中を奥様と二人で散歩されていましたね。やっぱり北海道は広さが全然違います。

 天気のいいときに歩くかという感じで、妻と二人で週に2、3回ね。だって全く動かないですからね、僕。ずーっと家にいますから、ウォーキングでもしないとどんどん体が弱っていくから。ちょっと前までは一人で結構走ってたんです。5キロ、6キロ、8キロぐらいぐるーっと回って帰ってくる。でも、さすがに年を取ってくるとランニングはきつくて、妻と一緒のウォーキングに変えたんです。北海道は広さだけはあるので気持ちいいですよ。