買い物の場も主戦場はインスタグラムやTikTokへ

横並びになってスマホでセルフィーをる撮る欧米人がいれば、急に踊りだすアジア系の観光客もおり、ブランドショップの紙袋を両手に抱えた中国人が満面の笑みで歩いていた。

路上にはあちこちにインバウンドが食べ散らかしたゴミが落ちており、外国人観光客に媚びることでしか生き延びることができない発展途上国のような退廃的な雰囲気が漂う。

都内のある私立高校では、渋谷駅周辺はトラブルに巻き込まれる可能性があるので、近づかないようにという指導がされているという。

買い物の場も主戦場はインスタグラムやTikTokといったSNS起点のECに移りつつあり、ギャルの聖地と呼ばれたSHIBUYA109の福袋を求めて全国から高校生が集まった平成時代のような熱狂はどこにもない。

駅前に次々とできたビルも、外見こそは最新鋭のピカピカだが、どうにも覇気がない。24年に開業した渋谷サクラステージを訪れると、一目瞭然だ。

オープンしてまだ間もないというのに館内は空きテナントが目立ち、エスカレーター近くの一等地ですら使われていない。スターバックスもタリーズもガラガラで、都心にこれだけ空いているカフェがあるのかと感心するほどだった。

おじさんたちは「渋谷は終わった」と嘆くが…

これは、サクラステージに限った話ではない。ヒカリエの隣に24年に完成した渋谷アクシュも、渋谷駅から直通であるにもかかわらず飲食店は空いており、店員が暇そうにしていた。「多種多様な人々が行き交う場所で、交流を誘発する」というコンセプトも、現状では虚しく映る。

こうした状況をみて、「渋谷は終わった」と嘆く中高年が多いのも無理はない。

渋谷を渋谷たらしめた雑多さが失われ、駅前の一等地に建つ無機質なビルがガラガラだというのであれば、再開発は失敗だったと結論づけたくなるのは人情だろう。SNSに渦巻く、「昔の渋谷を返してほしい」という声にも頷きたくなる。

もっとも、こうした見方はあくまで素人の声にすぎない。不動産業界からは、全く異なった評価が聞こえてくる。

「渋谷駅周辺の開発は、近年の東京の再開発の中でも、最もうまくいった例ではないか」

オフィス仲介を手掛けるA氏はこう断言する。これだけガラガラなのになぜ――と疑問が真っ先に出てくるが、答えは低層階の商業施設ではなく、中〜高層階のオフィス部分にあった。