髙橋遥人がついに覚醒した理由

「普通に投げられれば、今すぐにでも球界を代表する左のエースですよ」

以前、阪神タイガースOBの井川慶氏が語っていた一言を思い出す。開幕から約2週間、登板数はわずか3試合ながら、髙橋遥人の投球クオリティが近年まれにみるレベルに達している。

今季2度目の完封勝利を挙げた阪神・髙橋遥人 (写真/共同通信社)
今季2度目の完封勝利を挙げた阪神・髙橋遥人 (写真/共同通信社)
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2017年にドラフト2位で指名され、今季はプロ9年目となる30歳。早い時期から素材の良さは高く評価されてきたが、左肩に左肘と、度重なる故障に悩まされ、昨季までプロ通算で57試合登板。

それでも、「投げられればエース」という井川氏の言葉通り、トミー・ジョン手術を受ける直前の2021年には7先発で2完封、防御率1.65。リハビリ明けの2024年は5先発で同1.52、昨季も8先発、43回1/3を投げて同2.28と高いクオリティを維持し続けてきた。

そして迎えた今季。開幕ローテの座を射止めると、シーズン初登板となった3月28日の巨人戦で9回112球、被安打3の完封。二度目の先発となった広島戦では6回1失点、そして今季三度目の先発となった4月12日の中日戦では9回123球、10奪三振で早くも今季二度目の完封と、まさに無双状態が続いている。

今季から本格導入されたNPB公式アプリ「NPBプラス」で髙橋のトラッキングデータを見ると、その凄味はさらに浮き彫りになる。直球の平均球速143.9キロ、最高球速148.7キロは、「高速化」が進む近年のNPBにおいては平均的だが、特筆すべき数字がふたつある。それが、「空振り率15.0%」と「被ハードヒット率27.7%」だ。

空振り率は、文字通り全投球に対してどれだけ打者を空振りさせられたかを示す数値だ。15%という数値がそもそも非常に高いが、球種別に見るとその凄味はさらに浮き彫りになる。髙橋の決め球は鋭く落ちるツーシームだが、空振り率は実に24.0%。140キロ前後の球速で鋭く変化するこの決め球を、髙橋はしっかりと低めに投げ込むことができる。

また、同球速帯に逆方向へ変化するカットボールを持っていることも非常に大きい。ツーシーム同様、140キロ前後で投じられながら、右打者から逃げるように落ちるツーシームとは逆に鋭く懐へ食い込んで切る。こちらも空振り率24.0%と、「決め球」レベルのクオリティだ。