「金太郎、キャリアを示す。」(集英社文庫・コミック版4巻収録)
入社一年で培った金太郎のキャリア
「キャリア」とは何だろうか。
履歴書に並ぶ学歴や職歴のことか。それとも会社で積み上げていく経験や実績のことか。一般的には「経歴」「職歴」といった意味で使われる言葉だが、その中身は人によって少しずつ違う。
そんな「キャリア」という言葉を、真正面から扱うのが『サラリーマン金太郎』第37話である。
この回で金太郎の前に現れるのが、元官僚のエリート・鷹司誠士。彼は「キャリア」という言葉について、こう説明する。
「経歴、経験、つまり人間が生きていく上で積み重ねていくものだ。それは自分一人で積み重ねられるものではない。人と人だ。人に出会い、人に信頼されるということだ」
役人の世界では、東大卒などの幹部候補を「キャリア官僚」、それ以外を「ノンキャリア」と呼ぶ区別がある。だが鷹司は、その分け方を「実にくだらん」と切り捨てる。人間の価値をそんな区分で決めるのはおかしい、というわけだ。
そして鷹司は金太郎に言う。
「お互い、本当の意味のキャリアを積み重ねていこうじゃないか」
その直後、物語は思わぬ展開を迎える。金太郎が車にはねられる事故に遭ってしまうのだ。「金ちゃんが死んだ!?」という噂が瞬く間に広がり、街は騒然となる。
病院には、恋人の美鈴をはじめ、ヤマト建設の会長や社員、さらに総会屋の三田善吉、暴走族時代の仲間たちまで――数え切れないほどの人々が、金太郎の無事を確かめるために集まってくる。
幸い金太郎は腕を骨折した程度で、大事には至らなかった。この様子を見た三田は、鷹司にこう言う。
「お前、金太郎はキャリアを積み重ねることを知らんと言ってたな……。奴が上京して、たったの1年……。生まれてからとしても23年……。あの男のキャリアとは、まさにこれだな。この熱い血の通った人との交わりだわ」
履歴書に書ける経歴でも、役職でもない。だが金太郎のまわりには、これだけの人が集まる。
それこそが、金太郎の積み重ねてきた「キャリア」なのだろう。
『サラリーマン金太郎』第37話は、学歴や肩書きでは測れない、人と人との関係こそが人生の財産なのだと、豪快に示してくれる回である。























