「ペットボトル1本分(117円)の軽減を命と引き換えにできるのか」
それだけではない。
「病気になると退職や転職、働き⽅の変化により所得が減少する場合も多くあります。がんと診断された1年後に所得⽔準が平均で34%減少したとの分析結果が出ています」
患者の生活実態をそう話した天野理事長は、所得が3割弱減ればほとんどの年収区分で負担は「破滅的医療⽀出の40%を⼤きく超える50%、60%、あるいはそれ以上の⼤きな割合となる」と訴えた。
本並・保団連事務局次長は「所得が3割減れば間違いなく受診抑制が起こる。厚労省は年収が維持される前提で支払いに耐えられるかどうかを議論するが、所得減少時のシナリオは考えていないことがわかっている。所得減による支払い余力の調査をしていない。これが最大の問題だ」と話す。
この改定で生み出せる健康保険加入者1人あたりの負担軽減額は、平均で年間約1400円、月額で117円程度だ。
乳がんで闘病中の板井富子さん(62)は「治療とそれ以外にかかる費用もあって、体も気持ちもズタズタにされた思いでした。でも、高額療養費(制度)があるから頑張って治療していこうと私は前向きに捉えることができました。ペットボトル1本分(117円)の軽減を命と引き換えにできるのかという問題です」と話す。
石破前内閣の反省から、厚労省は全がん連など患者団体も参加する専門委員会を計9回開いた。
だが、厚労省と財務省は昨年12月24日に引き上げを決めると、それを翌日の第9回専門委員会で示しただけで協議は行なわれていない。
さらに翌26日に負担増を盛りこんだ2026年度予算案が閣議決定され、委員会はその後一度も開かれていない。
「現状でも支払いが困難でより治療効果が低い1世代前の古い治療や薬を選択している患者さん、子どもの将来のためにお金を少しでも残したいと治療自体をあきらめる決断をされたがん患者さんがいます。非正規雇用のがん患者さんの中にはクレジットカードのリボ払いでしのいでいる人もいます」
がん患者の追い詰められた生活を紹介した天野理事長は、負担額の議論は終わっていないと訴えた。
保団連が呼びかけた負担限度額引き上げ撤回を求める署名は27万1923筆(4月7日時点)に達している。
「責任ある積極財政」は病気の人には届かないのか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













