プライス博士の慧眼―「人類は農業によって退化した」
糖質と歯の関係で言うと、特に印象的なのが、ウェストン・A・プライス博士の『食生活と身体の退化』です。
1930年代、歯科医師だった博士は世界各地を旅し、「農耕文明以前の狩猟採集生活と虫歯の関係」に切り込みました。まだ文明と接触していない先住民がいたため、比較研究が可能だったのです。
調査の結果は衝撃的なものでした。彼らは非常に健康で体格も良く、歯列はピシッと整い、虫歯はほとんどゼロ。
プライス博士は先住民が食す「伝統食」に注目し、その栄養価を分析しました。
すると、当時のアメリカ人の食事に比べてビタミンやミネラルは少なくとも4倍、さらに動物の脂身に含まれるビタミンAやDは最低でも10倍。それは現代人の必要とされる1日の推奨摂取量とはまるで違ったのです。
人類が農業を始める以前、旧石器時代の人間は米や小麦なんて食べていませんでした。糖質はほとんど摂らず、肉や魚がメイン。だから虫歯も歯周病もなく、親知らずも一生残っていたと報告されています。
この傾向は北極圏に住む先住民、イヌイットにも見られました。彼らはアザラシやカリブーの肉、アザラシの脂に漬けた鮭を食べる生活。糖質はほぼゼロで「歯医者いらず」でした。
編集者:「アザラシの脂に漬けた鮭って、すごい料理ですね」
僕:「でも健康にはバッチリだったんだよ」
一方、近代化で精製小麦や砂糖が広まると、重症の虫歯や口腔の問題が急増。歯列は狭まり乱杭歯が増え、舌がんの発症率も若年層で上昇。さらに歯周病や関節炎など退化的な症状も。プライス博士は「人類は農業によって退化した」と結論づけました。
糖質の過剰摂取が体を蝕むことは、現代でもあちこちで見られる課題です。軽視できない問題なのです。













