校長から届いた手紙
すると後日校長から改めて修正を促す手紙が自宅のポストに投函されていた。手紙の内容は上記の写真の通りだが、一部抜粋する。
〈この文を書いたナナミさんの気持ちを考えると、申し訳ない気持ちでいっぱいです〉
〈しかし、この作文をこのまま卒業文集に載せたという思いをずっと引きずっていくことは避けなければならないと思います〉などと書かれている。
最終的に学校側の修正案にうなずくことはなく、ナナミさんの作文は書いたままの形で掲載された。ナナミさんからすれば幾度も学校に期待し、学校に裏切られた思いだっただろう。
いじめをはじめナナミさんに対する学校側の対応は正しいものだったのだろうか。
ナナミさんが通った学校に取材を申し込んだが「個別の案件はお答えできない」として取材は断られてしまった。
当時の心境をナナミさんはこう語った。
「楽しそうに私をいじめる加害児童たち、いじめを受けている私と目が合っていながらも、ただ見ているだけの先生、その時のすべての人たちの目が忘れられません。同級生から『ズル休みをしている』『行事だけ出てきてズルい』など、心無い言葉を言われたこともありました。
このまま卒業したら『いじめがなかったことにされてしまう』とも思いました。私が2年間どのような気持ちで過ごしてきたのかを知って欲しかった。学校は加害児童やいじめの対応はいい加減なのに、卒業文集で都合の悪いことを出させないためにはこんなに必死になるんだと思いました。
この2年間、一生懸命に生きてきた私の思いまで否定するのかとも思いました。卒業文集には『寄り添ってくれた先生もいた』『助けてくれる人は必ずいる』と書きましたが、その後に、実際は加害児童やその両親にもいい顔をしていたこと等が分かり、深く絶望して誰も信じられなくなりました。全て分かった今となっては、当時の学校には助けてくれる人がひとりもいなかったのだと思いました」
ナナミさんの受けたいじめが「重大事態」にあたるとされ、市教育委員会が第三者委員会を設置したのは2021年のことだ。学校内のいじめ問題に精通し、その第三者委員会の調査にも関わったレイ法律事務所の高橋知典弁護士が見解を語った。
「卒業文集の内容にいじめを記載することを嫌がり、訂正を求める教員は多数います。校長側の言い分を考えれば、卒業文集という晴れ舞台で、いじめのことを書いた子自身が、将来いじめを引きずることを考えたのかもしれません。
しかし、校長側の本音は、卒業文集でいじめが多くの人の目に触れることを避けたいのだと思います。いじめの問題を正面から対応する気がない学校にとって、不登校になったいじめの被害者は、存在感のない、都合のいい被害者です。
卒業文集の際にもいじめを語らせなければ、いじめという子供の残酷さや、それに対応できなかった学校の問題も、周囲からは見えないまま、卒業とともに学校から押し流されていくことを期待してしまったのでしょう。
いじめを卒業文集に書きたいと願った子にとって、卒業文集に書かなかった程度で記憶から消えてくれることはありません。文集の内容が法に触れるようなものではない限り、その子自身の気持ちを受け止めるためにも、記載を変更するべきではないでしょう」
第三者委員会の調査が終わったのは2024年3月、調査報告書が市のホームページに掲載されたのは2025年7月だった。
後編では今なお苦しみ続けながら前に進もうとするナナミさんの人生に迫っていく。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













