「俺たちが信じたものは間違ってなかった」

27年の時を経て、最初に奏でた曲は『TIME ZONE』だった。

イントロが始まる。その瞬間だった。昭次は「一瞬で時間が巻き戻った」と感じた。

「正直、やれることはやってこの日を迎えたものの、まともに演奏できないんだろうなってどこかで思ってた。最後まで完走できなくて、何回もやり直したりするんだろうなって。

でも、そんなことはなくて。ひとりだったら多分できなかった。4人が集まったからできた。もちろん、魔法じゃないから、あの頃みたいにブワーッて弾けたわけじゃない。だけど、何だろう。みんなの思いが、4人の思いが、この4人だからこそ、この4人だからこうなんだっていう感覚が蘇った。

変わってないんだ。やっぱり、俺たちって。この日のセッションは完璧なんかじゃなかった。でも間違いなく俺たちの音だった」

曲を重ねるごとに眠っていた記憶が呼び起こされていく。

「健一の音、昔からいちばんデカかったな。やっぱり今もデカいんだ。なんなら今のほうがデカいじゃん。和也がベースアンプをセッティングする仕草も、目があった時の耕陽の表情も、昔見た光景だった。これが岡本健一だ。高橋和也だ。前田耕陽だ。これが男闘呼組だって。

いつかきっと、この日のことを思い出すんだろうなって、演奏中ですら思って。この瞬間に、あまりにいろんなことが詰め込まれすぎてたから。なんてすごい日なんだろうって。本当に夢みたいでした。なんか本当に」

初めて和也とセッションした日のこと、『ロックよ、静かに流れよ』のミッドナイト・エンジェルの演奏シーンの撮影のこと、さまざまな思い出が走馬灯のように昭次の脳裏を駆け巡った。

開始から5時間、セッションは終わった。

2020年8月、2度の延期を経て、27年ぶりとなる男闘呼組メンバーのスタジオでのセッションが実現。写真の中央は、サポートドラムの「ヒラポン」こと平山牧伸氏
2020年8月、2度の延期を経て、27年ぶりとなる男闘呼組メンバーのスタジオでのセッションが実現。写真の中央は、サポートドラムの「ヒラポン」こと平山牧伸氏
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和也の表情は満足げだった。

「男闘呼組は、やっぱり最高のバンドだった、俺たちが信じたものは間違ってなかった。
たださ、この日に関しては、やっぱり昭次のことだよね。

耕陽と健一は名古屋で一度会ってたけど、俺は本当に10年以上ぶりで。会えたことのうれしさとさ、こうなんて言ったらいいんだろうな。ああ、なんか、会った後、会いに来たことが間違いだったって思ったらさ、悲しいじゃん。で、そうはならなかったからさ。あいつはあいつのままだった」

構成/水野光博 写真/井村邦章

人生はとんとん ―成田昭次自叙伝―
成田 昭次
人生はとんとん ―成田昭次自叙伝―
2026年1月15日発売
2,200円(税込)
四六判/264ページ
ISBN: 978-4-08-790209-9

伝説のロックバンド男闘呼組のボーカル&ギター・成田昭次、初の自叙伝が発売!
50歳を超えて精力的に活動しチャレンジを続ける成田が語る、男闘呼組活動休止、逮捕、芸能界引退、そして奇跡の復活。舞台裏にあった熱き想いと涙。すべての成田昭次ファンに贈る著者渾身の一冊!

引っ込み思案だった幼少期、兄の背中を見て飛び込んだ芸能界、男闘呼組デビューの裏側、突然の活動休止、2009年大麻所持で逮捕。愛する兄の自死。
地元・名古屋の工場で働きながら、ようやく築いた平穏な毎日。そして、2019年男闘呼組メンバーとの運命の再会。
安定した生活を捨て、2022年男闘呼組再始動…。知られざる半生のすべてを赤裸々に語る。
男闘呼組メンバーである岡本健一、高橋和也、前田耕陽のコメントも収録。

Myojo10000字インタビューのスタッフが集結。本書の口絵には、『明星(Myojo)』でデビュー前から成田昭次を撮り続けてきたカメラマン井村邦章による撮り下ろしカットを掲載。

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