オウム幹部死刑と安倍元首相銃撃事件
オウムから離れ、地元で平穏な日々を送るなかで、加奈さんが自分の過去と向き合う機会が二度あった。
一度目は、2018年7月、麻原彰晃以下、教団幹部13人の死刑が執行されたときだ。ニュースを見ても加奈さんが動じることはなく、「感情の波も何もないくらい、へぇっていう感じでした」と振り返る。
かつては神聖で、絶対的な権力者だった麻原の死は、もはや加奈さんの人生に何の影響も与えることはなくなっていたのだ。しかし─。
「どこかふわっと持っていた自分のルーツみたいなものが、明確に否定されたなという感じ。やっぱり、オウムの中で過ごしていたあの時期は、一般的には間違っていた期間なんだなとか、あそこでつくっていた世界は、間違った世界だったんだなということが突きつけられたという感じです」
13人の元死刑囚の中には、教団内でよく見かけていた顔もあった。どこか遠い麻原の死よりも、「体育の先生のような、怖いけど優しいお兄さん」が凶悪事件の実行犯として死刑になったことのほうが、加奈さんの心に残った。
事件に関わっていたわけでもなく、ただ子どもの一時期をオウムの中で過ごしていただけにすぎないが、教団の犯罪を再認識した出来事だった。
二度目は2022年7月、安倍元首相の銃撃事件が起きたときのことだ。
山上徹也被告は捜査段階で「旧・統一教会に恨みがあり、元首相がこの団体と近しい関係にあると思い、狙った」という趣旨の供述をしていた。その後の調べで、母親が旧・統一教会に多額の献金をしていたことも判明した。
山上被告の供述をきっかけに、親が信仰する宗教を理由に子どもが困難を抱える、いわゆる「宗教2世」の問題がにわかに注目された。旧・統一教会、エホバの証人など、声を上げる「2世」が出てきたが、加奈さんはどこか他人事と思えなかったという。
「普通の人に共感してもらえないという悩みは一緒ですね。やっぱりベースに宗教がある人の苦悩は、どんなに説明しても理解してもらえないんです。ぶつける先、発散先がなかったがゆえの最終結果だと思いました。
私自身はうまいこと、なんとかいい感じにやっていますけど、じゃあ、山上被告のようにならなかったかというと、それはそれでわからないじゃないですか。同じ2世の子でも、ぶつけ方が違ったら、同じ結果が出た可能性もあるよな、と思います」












