長く伸びた髪を後ろに結わえた山上被告は…

戦後初めて首相経験者が殺害された前代未聞の事件の審理がついに始まった。事件発生から3年以上。裁判員裁判に向けた公判前整理手続は異例の長期にわたった。

初公判の日は、くしくも山上被告の凶弾に倒れた安倍氏の「後継」を自任する高市早苗首相が初めての日米首脳会談に臨んだ10月28日。奈良地裁には早朝から、32席の傍聴席に対し700人以上が傍聴券を求め、列をつくった。

山上被告(共同通信社)
山上被告(共同通信社)
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ワイドショーのスタッフは現地の様子についてこう語る。

「抽選会場となった奈良公園の広場にはマスコミはもちろん、元迷惑系YouTuberで奈良市議のへずまりゅう氏をはじめ、事件に関心を持つ人々が多く押し寄せていました。抽選券は“リストバンド型”で外すと無効になる決まりになっており、当選したらさらにもう一つ、傍聴券となるリストバンドを巻くことが義務付けられました。

また、警備がかなり強化されており、地裁に入る時だけでなく法廷内に入る際にも金属探知機が使われ、私物はもちろんメモ用のペンも裁判所が貸与していました。ペン型カメラの撮影や録音などを警戒した処置だと思われます」(ワイドショースタッフ)

山上被告が問われたのは、殺人、銃刀法違反、武器製造法違反、火薬類取締法違反、建造物損壊の5つの罪。証言台に座った山上被告は、長く伸びた髪を後ろに結わえ、長袖Tシャツ、グレーのズボンを身につけていた。罪状認否では「全て事実です。間違いありません」と罪を認めた。

弁護側は殺人罪などについては争わないとしたが、被告が使った手製の銃については銃刀法違反の「砲」に当たらないなどと主張した。公判での主な争点は量刑になるとみられる。

「検察側は冒頭陳述の要旨を40分程度かけて読み上げました。そこで示されたのは、裁判の対象になっている6件の事件です。山上被告は、自ら『手製パイプ銃』を自作し、弾丸を発射するための『黒色火薬』もつくっていました。

犯行を実行するまでに、自ら製造した改造銃の『試射』を奈良市内の山中で繰り返し、犯行前日には旧統一教会の施設が入居するビルに向けて銃撃もしています。公判では、これら全ての罪を併合して審理される見込みです」(全国紙社会部記者)

集英社オンラインが入手した冒頭陳述では、検察官の意見として「母親の旧統一教会問題が事件と関係があること自体はそのとおりだ」とはっきり示されている。

それは、「犯行に至る経緯」の冒頭に、1991年ごろに山上被告の母親が旧統一教会に入信したことを挙げていることからも明らかだ。

冒頭陳述によると、山上被告の母が「多額の献金」を続けた結果、「母方祖父と母の間で衝突が起き、被告人(山上被告)ら家族も祖父とうまくいかなくなった」とされる。そして、山上被告にとっての「家庭」は安息の場所ではなくなってしまったのだという。