オウムの子がほかの「宗教2世」と決定的に異なる部分

ただし、オウムの子はほかの宗教の場合と決定的に異なる部分もあると感じている。それは、前代未聞の凶悪犯罪を起こしたという点と、教団内で出家生活を強いられたということだ。

加奈さんはこれまで、「2ちゃんねる」などのインターネット掲示板、旧・Twitter(現・X)などのSNSで、オウムが人々の間でどのように語られているのか、つぶさにチェックしてきた。事件を起こした危険な犯罪集団─という書き込みがほとんどで、子どもに関するものはなかった。

ここ数年、「宗教2世」の問題に光が当たるなかで、「オウムの子」に関するニュースや記事は、ほとんど見かけることはない。地下鉄サリン事件など、大きな犯罪を起こした「テロ集団」であるという事実が、オウムの子に声を上げにくくさせているのではないかと加奈さんはみている。

加奈さんはこれまでに何度か、ブログなどで自身の経験を発信しようと考えたことがあった。事件の内幕ではなく、子どもの目から見た教団内の暮らしを何らかの形で書き残しておきたいという思いからだった。

「危険なテロ集団」の中には100人以上の子どもがいて、日々の暮らしを送っていたことを伝えたかった。しかし、どうしても書けなかった。

教団施設から保護される「オウムの子」(画像提供/NHK)
教団施設から保護される「オウムの子」(画像提供/NHK)

「ずっと隠すことに一生懸命になってきたので、うまく発信することができないんですよ。人に言わないという選択をしてきたので、何をどうやって書けばいいのかわからないんです」

自分だけではなく、多くの子どもたちが同じように自らの過去を隠し、息を潜めて生きているのではないかと思う。だからこそ「オウムの子」が、いわゆる「2世問題」のひとつとして顕在化することはないと、加奈さんは考えている。

山上被告は旧・統一教会に強い恨みを抱いていた。しかし、加奈さんは、社会人になってから「親の人生や教団にいつまでも引っ張られるのは違うと思う」と考えを改め、今の暮らしを築き上げてきた。

もちろん、そこに至るまでの間にさまざまな葛藤はあったが、自分の努力で乗り越えてきたという自負がある。