国会で漢字テストも
2009年には「未曾有」を「みぞうゆう」と読んでしまい話題となっていた麻生首相に対し、民主党(当時)の石井一議員が国会で改めて「漢字テスト」を実施した。
石井議員は首相が就任直前に月刊誌「文芸春秋」に寄稿した論文から12の単語をセレクト。
「就中(なかんずく)」「畢竟(ひっきょう)」「窶(やつ)し」など難読漢字を記載したパネルを用意し、読めるかを問うたうえで、「(論文は)本当にあなたが書いたのか」と追及した。
これに対し首相は「書かせていただいた。皆さんが読みにくいのは『身を窶し』ぐらいじゃないか」と答弁し、漢字テスト戦略は不発に終わった。
政策そのものではなく、首相個人の読み間違いに焦点が当たったことで、「国会でそこまでやる必要があるのか」という批判を招いた。
国会以外の場ではあるが、今回のWBCに似た構造の野党批判の例は過去にもある。
安倍政権下では、首脳外交の一環として行われたトランプ大統領との「ゴルフ外交」が、野党からの批判対象となった。
立憲民主党の福山哲郎幹事長(当時)は2018年4月、北朝鮮や通商問題、シリア情勢が緊迫する中でのトランプ大統領とのゴルフについて「国民の理解を得られないのではないか」「違和感がある」と批判した。
一方、外務省は、両首脳がゴルフと夕食を通じて日米関係の幅広いテーマについて意見交換し、親睦を深めたとしており、政府側は一貫して外交日程の一部とかねてから位置づけていた。
昨年から続く関税問題を例に引くまでもなく、トランプ大統領との親密な関係は、今となっては外交上重要であることは広く認識されているが、当時はこの文脈で首相を批判する一部メディアもあった。
政策成果そのものより「ゴルフをしていた」という絵柄が先行した点で、象徴的批判の典型例の一つといえる。
このように政治の場において、政策そのものではなく、政治家の象徴的な行動や発言を取り上げて問題を印象づける手法がしばしば取られることがある。
短いフレーズで伝わりやすく、メディア報道やSNSで拡散しやすいという特徴がある一方、政策の中身よりもエピソードだけが注目されるという側面もある。
今回のWBC観戦をめぐる質疑でも、SNSでは、
「野球観戦より税金や物価を議論してほしい」
「これでは政策審議が進まない」
といった声が広がった。
もちろん、政治家の行動や姿勢を問いただすこと自体は国会の役割の一つである。危機管理意識や庶民感覚を問う議論は、政治への信頼にも関わる問題だ。
ただし、国会には限られた審議時間しかない。予算や法案、物価対策や外交政策など、国民生活に直結するテーマを議論する時間をどのように確保するかは、与野党双方にとって重要な課題となっている。
WBC観戦をめぐる今回の質疑は、国会審議の優先順位や政治のコミュニケーションのあり方について、改めて議論を呼びそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部













