松坂世代を凌駕する濃いメンバーが終結した「山本由伸世代」

80年度生まれが「松坂世代」と呼ばれるように、プロ野球界では世代を象徴する選手の名前を冠して「〇〇世代」と呼ぶことがある。

98年度生まれには山本、牧をはじめ、今井達也、藤平尚真、佐藤輝明と才能がひしめくが、やはり「山本由伸世代」と言われることが多い。その呼び名について、牧はいっさいの迷いなく首を縦に振る。

「今はもう、間違いなく『由伸世代』なんじゃないですか。あれだけの大舞台で、堂々と活躍している同級生は他にはいませんから。僕自身もそうですし、他の選手たちも、そう呼ばれることに異論はないと思いますよ。彼が先頭を走ってくれていることは、僕らにとって刺激にしかなりませんから」

牧は〝世代の象徴〟としての山本を認め、野球人として同じ時代を生きることを幸運だという。

「由伸が同級生にいたことは、幸運だと思いますよ。だって由伸がメジャーで活躍すれば、自分ももっと頑張れるという気持ちになりますし、追いつけるものではないかもしれませんけど、負けられない。自分ももっと上を目指さないとと、背中を押されますから」

牧にとって山本はどんな存在か? そう質問を振ると牧らしいユニークな答えが返ってきた。

「『学校の仲良しグループのなかにいる欠かせない一人』ですかね(笑)。由伸とはしのぎを削るライバルだったこともないし、同じチームで切磋琢磨した盟友といえるような存在でもない。でもたまたま同級生だったことで仲良くなって、いろんな話もするようになって、刺激を受けて、学ぶことも多いですから」

これまで二人の対戦は、シーズン前のオープン戦にかぎられていた。ともに日本でプレーしていた3年間、交流戦やオールスターなどシーズン中に、二人が相まみえる機会は、一度も訪れなかった。

「公式戦でちゃんと対戦したことがないんですよ。だから1回は真剣勝負で対戦してみたい。本気の由伸の球を、打席で体感してみたいというのはあります。それがメジャーの舞台なのか、どういう形になるのかはわかりませんけど。とにかく一人の打者として、世界一の右腕に挑んでみたいという思いは常に持っています」

メジャーの舞台で戦い続ける友へメッセージをお願いすると、牧は少し照れくさそうに、しかし力強い言葉を紡いだ。

「同級生の鑑として、これからも先頭に立って戦い抜いてほしい。由伸が戦っている姿を見ると、自分たちも日本で頑張っていける。だから、そのまま突き進んでほしい。それは伝えたいですね」

WBC2026準決勝で山本由伸が登板する可能性が高いマイアミの「ローンデポ・パーク」(写真/shutterstock)
WBC2026準決勝で山本由伸が登板する可能性が高いマイアミの「ローンデポ・パーク」(写真/shutterstock)
すべての画像を見る

取材・文/石川哲也

『証言 山本由伸』(宝島社)
牧秀悟、工藤公康、 井口資仁、 五十嵐亮太、金子千尋、西村徳文、高山郁夫、入来祐作、星野伸之、能見篤史、増井浩俊、矢田修ほか
『証言 山本由伸』(宝島社)
2026年3月16日
1,650円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4299075895
ロサンゼルス・ドジャース世界一の立役者、日本人プレーヤーで史上2人目、投手としては初のワールドシリーズMVPを受賞し、世界の頂点に立った山本由伸選手。その偉業達成までの歩み、才能の真実を、かつてのチームメートやMLB経験者、専属トレーナーなど、さまざまな関係者のインタビュー取材で浮かび上がらせる証言集です。関係者の証言であらわになる山本由伸の「異次元の凄さ」とは。
amazon