WBC関連の話題を極力、避けてきた理由

キューバとの決勝戦。その手には、韓国戦での決勝弾で自分の救世主となった先輩のバッティンググローブが、無意識に装着されていた。初回に放った、4点目を演出するセンターへの2点タイムリーは、迷いなくバットを振り切る、今江らしい一打だった。

10打数2安打、4打点。大会を通しては決して誇れる数字ではないかもしれない。だが今江は、最後の最後でチームの勝利に貢献し、自らの手で呪縛を解き放った。

初代王者の一員として手にした、チャンピオンリング。だからといって、急に雄弁になったわけではない。WBCを見るたびに、敗因の一端となるミスをしてしまった選手の落胆は他人事と思えなかったこともあり、大会関連の話題を極力、避けてきた。

苦難と栄光へのストーリーを包み隠さず話せるようになったのは、ユニフォームを脱いだ最近になってからだという。

「『そんなこと、あったっけ?』って言われることが多いんですよ。意外とそんなもんなんだって……」

安堵と同時に、やや不満も漂わす。それもまた、日の丸を背負って戦ったからこそ得られる幸福なのだと、今江は噛みしめている。

第1回WBCで優勝した日本。左から今江敏晃、イチロー、青木宣親、藤川球児(写真/産経新聞社)
第1回WBCで優勝した日本。左から今江敏晃、イチロー、青木宣親、藤川球児(写真/産経新聞社)
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文/田口元義