「人生……終わった」
激動の一戦は9回裏にサヨナラで敗れた。奇しくもこの敗戦、あのジャッジが日本国内でWBCの認知度を高める契機となる。
「なんか、日本ですごいことになってる」
その声は、アメリカで戦う選手たちの耳にも届いた。WBC開幕当初こそ控えめだった今江にも、少しずつ「日の丸」という精神が染み渡るようになっていくのだった。
国を背負う。責任は緊張を生む。それは時にプラスにもマイナスにも働く。今江にとっては、後者となってしまった。
第2ラウンド2戦目でメキシコに勝利し1勝1敗で迎えた、韓国との3戦目。今江の出番は突如として訪れる。2回に岩村が走塁で右足の太ももを肉離れしてしまい、3回からサードを守ることとなったのだ。
「序盤のアクシデントだったじゃないですか。しかも、宮本(慎也)さんと新井(貴浩)もサードを守れたんで『あれ、自分が出るんだ』って。ちょっとあたふたしたというか」
そんな今江に魔が差したのが8回だ。
1死一塁。相手バッターの打球が外野に抜け、一塁ランナーが二塁ベースを蹴る。センター・金城龍彦の送球が理想的なワンバウンドで今江にボールが届いたが、両手で捕球したことでヘッドスライディングを敢行した相手と衝突し、落球してしまったのである。
いつもなら、あり得ないプレーだった――そう今も今江の琴線を揺さぶる。
「完全にアウトのタイミングで、しっかりと捕球して『タッチをしっかりしよう』っていうなかで、大事にプレーしすぎたっていうか。まだまだ経験の浅さがあったというか……最悪の場面で出てしまったプレーでした」
このミスで二、三塁とピンチが拡大した。そして、次のバッターに決勝点となる2点タイムリーツーベースを許し、日本は敗れた。
「人生……終わった」
景色のすべてが灰色だった。歓喜に沸く韓国がマウンド上に国旗を立て、ベンチからそれを睨みつけていたイチローが怒声を吐き捨てたシーンもあったと後から知った。ロッカーでの記憶もなく、宿舎で食事を摂ったかも認識できないほど記憶が飛んでいた。













