デモ主催団体のアジトに「潜入」

ホテルに籠ってデモの嵐をやりすごした翌日曜日の8日、街へと出てみた。この日のミラノは喧噪に満ちた昨日と違い、静寂に包まれていた。多くの店が閉まり、観光客も手持ち無沙汰に見える。

私自身はミラノが3回目の訪問であったため、大体の観光地にはすでに回ってしまっていたので、「さてどうしようか」とちょっと悩んだ。そこで自動翻訳を使いながらXを読んでいったところ、何とデモの主催団体が「後夜祭」を企画しているとの投稿を見つけ、彼らの活動拠点を覗いてみることにした。

彼らのアジトになっていたのは、「PalaSharp」と呼ばれる休館したスポーツ施設だった。都心部での抗議活動拠点になるほどだけに、ロケーションは良好であり、SNSのタイムラインからは自然発生的にそこに出入りする人が増えていった状況が伺える。

「PalaSharp」と呼ばれる休館したスポーツ施設
「PalaSharp」と呼ばれる休館したスポーツ施設

私としては、反グローバリズムの活動という点でいささかの偏見も持っており、日本の新左翼系の拠点をイメージしてしまっていた。

想像力が乏しいせいか、ゲバ棒を持ってヘルメットを被った人たちが会場を不法占拠している図が頭に浮かぶ。すいぶんと怖い集団なのではないか、危なそうだったらすぐに引き返そうと決めていた。

ただ、そうした心配は杞憂だった。実際に足を運んでみると、そこにはまるで「縁日」や「村祭り」ともいうべき穏やかな光景が広がっていたのである。

廃墟化した大型スポーツ施設の中では、ボルダリングが楽しめたり、レスリングの観戦が出来たりと、娯楽としての完成度も高い。飲食も充実しており、生ビールはもちろんのこと、頼めばカクテルも作ってくれたし、ツマミも充実していた。

ボルダリングを楽しむ若者たち
ボルダリングを楽しむ若者たち

お土産用の物販もたくさん用意されており、私は「自分へのお土産」として、反ICE活動のマフラーを購入することにした。

アジトの屋外ではヨーロッパの抗議活動で欠かせない、いわゆる「落書き」アートが作成中だった。ヨーロッパでは「抗議の意思を落書きで表す」ことはとてもポピュラーなことなので、日本人が初めてこうしたシーンに出くわすと面食らうのではないか。

しかし、現地では「芸術文化活動」として広く是認されているので、いずれ、このアジトの落書き群も芸術作品として扱われる日が来るかもしれない。

参加者たちを見回すと若い人が多く、日本との違いを感じる。日本の反政府系のデモは高齢者がかなりの割合を占めるが、ここでは若者や家族連れが多い。子どもが三輪車で遊ぶ光景も見られ、まるで「カジュアルに権威への反抗を楽しむ」と言ってもよいような光景が広がっていた。

お土産物コーナーにいた人たちに「今回の活動は成功したと思うか?」と聞いてみると、こんな冷静な答えが返ってきた。

「多くの人が抗議に参加したという点はよかった。ただ、結局何も変わっていないことも事実。その意味では成功とは言えない」