究極の味は国を越えて似てくる
吉田 甘めのものは確かにおいしんだけれど、なるべく甘めじゃないものを、お酒とは合わせるようにしています。甘さが勝ってしまうんですね。お酒と合う味というと、だし味です。そもそも僕の故郷の土佐は「だしの国」なんですよ。戦国時代に土佐に下向した一条家が京都のだしの味を伝えたといわれています。
稲田 酒を飲むからこそおいしい味ってありますね。ある宮城県の方が、世の中で言われているほど宮城の人はホヤを食べないよと言ったんです。それに反論した人がいまして。それは酒を飲まない人たちの世界観であると。酒を飲む宮城の人は、ホヤを食べまくってると。
吉田 僕はホヤを食べに、岩手まで行ったことがあります。太平洋側ですね。日本酒に合わせるのはこれしかないと思うような、えらいうまいホヤでした。お酒を飲む人は、イタリアンでもフレンチでも、酒に合わせて食べものを選ぶんですよ。だから飲む人と飲まない人では、求める味が微妙に違ってくるでしょうね。
稲田 そうですね。今回の本は「東西」という、エリアによる味のグラデーションや違いを書いたわけですが、これとは別に、酒を飲むか飲まないかによるグラデーションもあるということですね。
吉田 そうでしょうね。
稲田 それから今回の本には、入れられなかったトピックがたくさんあるんです。その一つが「煮込み」だったので、お話しできて嬉しかったです。
吉田 煮込みは本当に深くて、世界ともつながるんです。以前、「酒場放浪記」のフランス編(「吉田類フランス大紀行~美食と芸術を訪ねて~」)でリヨンに行ったんです。「ブション」と呼ばれる大衆食堂に入ったら、ここの定番が内臓料理なんですね。東京の煮込みとどう違うんだろうと思って食べたら、基本、同じなんですよ。店の女性が言うには、おばあちゃんの味なんだと。安い内臓を使ってみんなが喜ぶ料理を作ろうと思ったのが始まりだということで、成り立ちも東京と同じでした。おいしかったですね。
稲田 同じ味だというの、わかります。味付けが味噌か、塩とハーブかは、関係なくなるんですよね。インドにもあるんです。ソルポテルという煮込み料理があって、味付けはスパイスですが、東京の煮込みと似ています。
吉田 究極の味って、似てきません?
稲田 原始的な味と、ものすごく作り込んだ究極の味は、地域や国境を越えて似てきますね。その間にいろんなバージョンが広がっているのも豊かで面白くて。
吉田 煮込みの起源は大航海時代までさかのぼるそうで、ある店の主人は、遊びを兼ねてポルトガルに研究に行くと言っていました。
稲田 ポルトガルから中南米にも伝わっていますから、「世界もつ煮紀行」が書けそうですね。世界編と日本編で。
吉田 可能性が広がりますね。稲田さん、本当にいい食べ歩きをされていて僕も刺激を受けました。これからますます、いろんなところを回られるんでしょうね。
稲田 本人が楽しんでいるのは間違いないです。どこに行っても何かを発見したい、発見できなかったら俺の負け、くらいの気持ちでやってます(笑)。
吉田 この近く(神保町)だと、「兵六」行かれました?
稲田 いえ、行ってないです。
吉田 「既類目」ですが(笑)、しみじみと酒と料理が味わえるいい店です。
稲田 ぜひ、行ってみます。
吉田 次は酒場でお会いしましょう。
稲田 今日はありがとうございました。














