次は悪役にチャレンジ⁉

──お二人の書かれるものは、読者を前向きにさせてくれるというか、決して絶望に突き落とすような結末にしない印象がありますが、意識されていることはありますか。

宮島 私は現実なんて嫌なことばかりだから、物語の中くらいはうまくいってもいいじゃん、という思いで書いています。

阿部 私は何を書いたらいいのか分からなくなっていた頃に、『ハウルの動く城』の原作者でもあるダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの物語を読んだんです。そうしたら、人が魅力的だったんですよ。優しいとかではなく、悪だくみしている人までキュートなんです。私も、読んだ人に登場人物を気に入ってもらえる話を書きたいです。でも、今聞いていて、絶望の底に突き落とす話も書いてみたいとちょっと思いました(笑)。

宮島 私もなぜか悪役が書けないんですよね。私の小説は悪い人が出てこないと言われるけれど、自分が悪役とは向き合いたくなくて避けているんだと思う。でも、この先書くかもしれないし、それは分からないですよね。

──本屋大賞受賞後、生活や執筆に変化はありましたか。

阿部 宮島さんは大忙しでしたよね。

宮島 地域に密着している話だったので、滋賀県とのコラボでいろんなことをさせていただきました。始球式もやったし。でも、結局、書くものが劇的に変わったわけじゃないし、自分自身は変化はないかな。

阿部 そうですよね。私も、取材を受ける機会が増えたりはしましたが、本屋大賞をもらったのは『カフネ』という一作品なのであって、私自身に変化はないです。変わらず、死ぬまで小説を書いていきたいし、できたら面白いものを書けたらいいなと思っています。

──今後、どんなものを書きたいですか。

阿部 前から言っているんですけれど、いつか農業小説を書きたいんです。最近、毎年豪雨被害で農家さんが大打撃を受けているのが気になっていて、そういうところを調べてみたくて。それと、一般文芸を書くようになって、自分はやっぱりコバルト文庫やオレンジ文庫みたいなライト文芸もすごく好きだと実感しました。登場人物たちがテンション高めに掛け合いしているのが好きなので、またオレンジ文庫でも書かせていただけたら嬉しいです。

宮島 私はデビュー前の頃のように、恋愛小説も書きたいですね。いつか『失楽園』みたいなドロドロした恋愛小説を書きます。今すぐ書くと「成瀬」の読者さんたちがびっくりしちゃうから、長期的な展望です。

阿部 それ、めっちゃ楽しみです!

短編小説新人賞アンソロジー
著者:相羽 鈴 阿部 暁子 久賀 理世 白川 紺子 後白河 安寿 一原 みう 佐倉 ユミ
奥乃 桜子 佐原 ひかり 宮島 未奈 泉 サリ 森ノ薫
装画:千海 博美
短編小説新人賞アンソロジー
2026年1月19日発売
792円(税込)
文庫判/320ページ
ISBN: 978-4-08-680678-7

【豪華作家陣12人の“幻のデビュー作”を収録した、必読の傑作短編集!】
これまで数多くの人気作家を輩出してきたコバルト・オレンジ文庫の短編小説新人賞。その歴代受賞作から選びぬかれた珠玉の12編が、当時の選評付きでアンソロジーに!

宮島未奈(『成瀬は天下を取りにいく』ほか)、阿部暁子(『カフネ』ほか)といった人気作家の”原点″となった物語を味わいつくせる、すべての小説好きと作家志望者に贈りたい、必携の短編集。
*宮島未奈「わたしの原点にして最高の自信作です」
*阿部暁子「今の自分にはもう書けない小説です」
さらに、短編小説新人賞選考委員の三浦しをん・青木祐子が編集部と魂をぶつけて議論を重ねた、受賞当時の選評コメントも特別掲載。小説家を目指すあなたにとっても参考になること間違いなし!
*三浦しをん (短編小説新人賞・前選考委員)「原石に磨きがかけられた最初の瞬間の光が、本書には詰まっている」
*青木祐子(短編小説新人賞・現選考委員)「争いが嫌いなわたしを、こんなに全力で戦わせるとは…」

【収録作品】
相羽鈴「ゴミ屋敷のマイルストーン」(第127回受賞)
阿部暁子「陸の魚」(第130回受賞)
久賀理世「みずいろサナギの伝説」(第141回受賞)
白川紺子「サカナ日和」(第154回受賞)
後白河安寿「傾城の美女呂姫」(第158回受賞)
一原みう「水恋花」(第160回受賞)
佐倉ユミ「靴磨きのボレロ」(第171回受賞)
奥乃桜子「灰色ハンスとにせもの侯女」(第172回受賞)
佐原ひかり「ままならないきみに」(第190回受賞)
宮島未奈「二位の君」(第196回受賞)
泉サリ「林ちゃん」(第209回受賞)
森ノ薫「ホテルアムステルダムの老婆」(第215回受賞)
(巻頭文:三浦しをん/巻末文:青木祐子)

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