就職セミナーに学生が来ない…日本で一番採用が難しい県の現状
──御社の事業内容、業界での立ち位置を教えてください。
若山健太郎代表(以下同) メガネの町として知られる福井県・鯖江市で、メッキと塗装を手がけています。従業員は約60名で、最寄りのコンビニまで2kmほど離れた田んぼの真ん中にある会社です。でも、そんな場所から国際的に有名なブランドのメガネのカラーリングを請け負っています。
福井県は、日本で生産されるメガネフレームの約95%を製造しており、その表面処理を担うのがメッキ業者や塗装業者です。業界には、当社の約5倍のシェアを持つ大手がいて、当社はシェア2番手の規模。そうしたなかで、「うちにしかできない」といわれるような、手間のかかる少し変わった表面処理に昔から挑み続け、付加価値を磨いてきました。
20年前に比べると、鯖江全体のメガネ売上はおよそ3分の1程度といわれていて、生産量もさらに減っています。だからこそ、当社はメガネだけにこだわらず、チタンやステンレスなど特殊金属の表面処理にも力を入れています。
──福井県は日本で一番採用が難しい県※だといわれていますが、製造業をはじめとした中小企業が抱える課題は、やはり採用なのでしょうか?
若手人材と後継者の不足は深刻です。とくに福井県は若年層が少ないうえ、有効求人倍率が全国1位の常連で、まさに「日本で一番採用が難しい県」なんです。
10年ほど前、就職セミナーに参加したときには約400社の出展に対し学生は200人ほど。各社が2〜30万円をかけても、接点を持てる学生は「0.5人」という感覚でした。学生の多くからは「どうせ働くなら大きな会社がいい」「中小企業には興味がない」という空気を強く感じましたね。
若年層の県外への進学や就職も増えていて、地方の中小企業にとって採用環境は年々厳しくなっています。
──企業側はどのような対応をされているのでしょう?
多いのが、大企業の経営ノウハウをそのまま持ち込むケースですね。ビジネス書の多くは大企業の視点で書かれていて、中小企業とは前提が異なると思っています。現場の文化に合わない仕組みを導入した結果、かえって組織が崩壊してしまうこともあります。
あとは経営者の高齢化もあって、新しいことへの理解がどうしても追いつかない。「何をどうすればいいのかわからない」という会社が多い印象です。だからこそ、若手社長への世代交代がもっと進むべきだと思います。
ただ、若手の社長であっても、大企業からの出向社長であっても中小企業特有の文化や強みを理解しないと、採用もDXのような新しい取り組みもおそらくうまくいきません。
──大企業と中小企業にはどのような違いがあると考えますか?
一般的に、大企業には四年生の大学を卒業した人が集まりやすいと思います。
いっぽうで中小企業には、本当にいろいろな背景をもつ人たちがいる。うちにはいませんが、元暴走族だった人から、良くも悪くも昭和の価値観のままのベテラン職人さん。逆に都会の大学を卒業して地方に帰ってきた人まで。ちなみに、うちの場合も年齢も18歳から75歳までと幅広い。
そうした多様な人たちに合わせたマネジメントが求められますが、例えばコンサルタントに入ってもらっても、「コンプライアンス」「意思疎通」といったカタカナや四字熟語を多用しがちで、それだと現場の人には何を言っているのか伝わらないんです。
多様な価値観を持つ人たちがどうやったら気持ちよく一緒に働けるか。私は大企業よりも細やかなマネジメントが求められると思っています。












