円安は日米の金利差という常識が崩壊

ならば中小企業も稼げる状態になればいいわけだが、現実は厳しい。主要因となっているのが、過度な円安だ。

帝国データバンクの「円安による企業業績への影響調査」では、円安が業績にマイナスの影響を与えるという企業は全体の6割に達している。プラスとの回答はわずか5%ほどだ。

円安は原材料高を引き起こすが、多くの中小企業はコストの負担増を価格に転嫁することができない。この調査では1割の企業が価格転嫁によって売上・受注が減ったと回答している。

そして足元の円安が恒常的なものであることを示す決定的な出来事が起こった。日本銀行が12月19日に金利の引き上げを決めたにもかかわらず、円安が是正されなかったのだ。

アメリカは12月に3会合連続で利下げを決定している。かつて、円安はアメリカと日本の金利差によるものだと説明されてきた。そのセオリーが崩れてしまったのだ。高市内閣が積極財政路線を進んでいるうえ、日銀の利上げペースが遅いことを市場に見透かされている可能性が高い。

これは円安が中長期的なものになることを暗示しており、中小企業にとっては大打撃だ。

会計システムを提供する株式会社フリーウェイジャパンが中小企業の代表取締役を中心に実施した「2025年 冬のボーナスに関するアンケート」では、「来年度の夏のボーナスの支給の見込みが立っていますか?」との質問に、「立っていない」と回答した割合は50%を超えている。

株式会社フリーウェイジャパンの「2025年 冬のボーナスに関するアンケート」より引用
株式会社フリーウェイジャパンの「2025年 冬のボーナスに関するアンケート」より引用

今の日本の経済状態を鑑みると、中小企業経営者は自信を持って来年のボーナスを払えると言える状況ではないというわけだ。

円安を背景にインバウンドは活況だが、結局のところ円の価値が他の通貨に比べて相対的に下がり、日本が貧しくなっているに過ぎない。中小企業で働く日本人の多くは円安の恩恵など受けてはいないのだ。