彩咲陽さんは失踪前日に警察官の携帯に直接電話をかけていた

ところが署員は「室内側から窓ガラスが割れている可能性がある。被害者(彩咲陽さん)自身が割った可能性がある」と言い、指紋の採取や撮影もしなかった。これは県警が9月に公表した「検証結果等報告書」にも記載されている。

だが同報告書には、その場でガラスが割られたことについての被害届を出すかどうかを聞かれた祖母が「今は提出しない」と答えたと書かれている。当時現場にいた幸子さんはこれに憤る。

「うそです。そんなこと聞かれていません。警察官は『事件性がない』と言うだけで何もしなかったんです。聞かれたら(被害届を)出すに決まってます。だって、捜査してくれって言うために110番しているんですよ」(幸子さん)

報告書は全体として対応の不備を認めているが、遺族が不信感を持つ内容は他にもある。

その一つが携帯電話を巡る、報告書にはない疑問だ。前出の通り彩咲陽さんは昨年12月9~20日に計9回、川崎臨港署に電話をかけ、白井の付きまとい行為を訴えようとしていた。だがこの9回の電話の存在自体、家族が自ら調べて県警に突き付けたものだ。

割られたガラス(写真/親族提供)
割られたガラス(写真/親族提供)

「彩咲陽の携帯は白井が持ち歩いているはずだから調べてって言っても、川崎臨港署は『自分たちでやってください』と言ったんです。それで携帯の名義人の妹(彩咲陽さんの祖母)が通信会社に頼み、彩咲陽の携帯からの発信記録をもらいました。その中に川崎臨港署に9回かけた記録があったんです」(幸子さん)

こうして今年3月25日に発信履歴を入手した幸子さんは手掛かりをつかもうと、記録されている番号の全てに電話をした。そこで思いもかけないことに行き当たった。

「失踪前日の(昨年12月)19日午後3時すぎに掛けた『070-』で始まる番号に電話をすると、相手が『臨港署の●●』ですと名乗ったんです。私も慌ててしまって詳しくただすことができずに電話は終わってしまいましたが、彩咲陽は警察官の携帯に直接電話をかけていたのだと思います」(幸子さん)

臨港警察署(撮影/集英社オンライン)
臨港警察署(撮影/集英社オンライン)