大型バラエティー番組が“ネット限定”で続々と

『芸人キャノンボール』は、16人のお笑い芸人が4チームに分かれて車で各地を駆け巡り、与えられたお題にぴったりの人物を探しながらゴールを目指す、いわゆる“借り物競争”を超巨大化した企画。お笑いのセンスはもちろん、交渉術、瞬発力、人間力が試される、藤井健太郎プロデュースらしさ全開の予測不能の旅番組である。

予算規模、ロケの自由度、編集の暴れ方……どれをとっても、地上波では到底成立しない。

『めちゃ×2メチャってるッ!』では、岡村隆史の“484日密着”という、これまた地上波では不可能な長尺ドキュメントが実現。1年以上の密着を数時間にまとめる異様なまでの濃度となり、いまや地上波の予算感では実現しえない番組作りが行なわれている。

こうした動きから、今年のネット配信はついに明確に「芸人の濃度で勝負する」領域へ舵を切ったと言える。地上波バラエティーのように枠を埋める、長く続けられる企画ではなく、濃縮し、一本の“作品”へと仕上げる狙いがはっきりしている。

では、地上波はダメなのかといえば、そうではない。むしろ地上波は、ネットとは真逆の方向でその強みを際立たせている。年末のバラエティー特番の主な顔ぶれは以下の通り。

『水曜日のダウンタウン』内の『名探偵津田』スペシャル
『芸人総選挙2025』
『クイズ☆正解は一年後』
『ウンナン極限ネタバトル!ザ・イロモネア 笑わせたら100万円』
『M-1グランプリ2025』

地上波の最大の武器は、視聴者が“ずっと意識を集中しなくていい”点にある。『芸人総選挙2025』や『クイズ☆正解は一年後』といったランキング・クイズ形式の番組は、番組が勝手に盛り上げてくれる。SNSで実況しながら、家族と雑談しながら、食事しながらでも成立する。

『M-1グランプリ』も例外ではない。ネタを見るためには集中力がいるように感じるが、実際の“ネタ披露時間”は3時間半以上の放送尺のうち、わずか60分ほど。残りは、紹介VTR、審査員のコメント、進行、点数発表といった“呼吸できる時間”で構成されている

M-1グランプリ2025のポスター(撮影/集英社オンライン編集部)
M-1グランプリ2025のポスター(撮影/集英社オンライン編集部)