「昔ヤンチャしてて悪い仲間と関係を絶ちたいので東京に来た」
それから1年後、執行猶予中であるにもかかわらず、谷本はその事実を隠して新宿区の運送会社に就職した。この運送会社社長は事件直後、集英社オンラインの取材にこう語っていた。
「谷本君は、うちが就職情報誌に出した寮付きの社員募集の広告を見て面接に来ました。態度がよかったので即採用を決めました。以前、関西の会社で10年以上働いたと言うので『なんで関東に来たの?』とたずねると、『昔ヤンチャしてて悪い仲間と関係を絶ちたいので東京に来た』と。更生するなら手伝ってあげたいと思い採用しました」
“谷やん”の愛称で慕われ、休日は所属する都内の社会人バレーボールチームで、子どもたちの面倒をみるなど、社会に溶け込んで生活を送っていた谷本容疑者。
彼を知る飲食店の店主は、
「いまだに彼があんな事件を起こしたなんて、信じられない。“いい奴”という印象しかなかったからね」
と振り返る。初めて店に谷本容疑者が訪れたのは、事件のおよそ1年前だという。
「彼が勤めていた運送会社の上司に連れられてきたのが最初でした。以来、多い時では週1くらい来ていたけれど、いつも会社の人たちと一緒で、一人で飲みに来ることはなかったね。うちでは生ビールや緑茶ハイなんかを飲んでいたけど、酔って醜態をさらすようなことは一度もない。むしろ、店が混んでいる時なんかは飲み物や料理を運ぶのを手伝ってくれることもあった」(店主)
四畳半の社員寮に暮らし、日曜日と平日の週休2日で働き、月30万円くらいの給料を受け取っていたが、運送会社社長によると、金に困っているような素振りを見せることもあったという。
「入社から半年ほど後に、毎月5万円を前借りさせてほしいと言ってきたことがあった。ここの寮費は3万5千円で、彼はギャンブルもしないので、理由を聞くと『親の療養費に使い、サラ金から300万円くらいの借金がある』と。それで僕の顧問弁護士の勧めで自己破産手続きを始めましたが、本人のやる気がなく、結局自己破産には至らなかった」













