「『中国人を追放しろ』と叫び、中国人を罵倒して回っています」

嫌中デモは日本人や中国人観光客から人気が高いソウルの明洞(ミョンドン)や、中国東北部に多く暮らす「朝鮮族」から韓国に移住した人が集まるソウルの大林洞(テリムドン)で頻発している。現地の記者がその実情について話す。

「参加者は『中国人を追放しろ』と叫び、中国人を罵倒して回っています。日本の新大久保でかつて起きた“嫌韓デモ”とそっくりですが、韓国や米国の国旗を持ち、『天滅中共(天が中共を滅ぼす)』と書かれたTシャツを着たりしています。気に食わない相手に『お前は中国人か』と言って殴りかかったりする事件もあちこちで起きていると報じられています」(韓国記者)

明洞での嫌中デモ。韓国JTBCテレビのYouTube画面
明洞での嫌中デモ。韓国JTBCテレビのYouTube画面
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韓国ではインバウンド拡大を狙い、今年9月末から中国人団体観光客へのビザ免除が始まった。しかし、その後ソウルにある朝鮮王朝時代の最大規模の王宮「景福宮」で中国人観光客が大便をして摘発されたことがデモ参加者の“嫌中”感情を刺激している。

韓国国内では、ネット上でもデマ交じりの中国人非難があふれている。どうしてこうなったのか。

韓国にとって中国は朝鮮戦争(1950~53年)で戦った相手だが、1992年に国交を正常化すると経済的な結びつきが一気に強まり、2000年代に入ってからは最近まで最大の輸出先だった。

「10年ほど前までは中国の将来性を期待して明洞にある中国人学校に子どもを送りたがる親が多く、韓国人が生徒の半分以上を占めていると言われるほどの人気でした」(中国駐在経験者)

韓国・ソウルの明洞(撮影/集英社オンライン)
韓国・ソウルの明洞(撮影/集英社オンライン)

その中国に警戒心が高まったのは2017年ごろだ。

「この年に、中国の弾道ミサイル撃墜が狙いとみられる米軍の『THAAD(終末高高度防衛ミサイル)』が在韓米軍基地に配備されました。

これに反発した中国が韓国に圧力をかけたんです。いま日本に行なっているのと同じような自国民の渡航自粛要請のほか、K-POPなどの文化コンテンツの中国でのマーケティングを制限し、中国に進出した韓国企業の活動にも圧力をかけました。その結果、韓国経済は大打撃を受け、この時から韓国では反中感情がくすぶってきました」(外交筋 )