冷食市場が10年で4割近く拡大

【生活者の声】惣菜と冷凍食品はもう欠かせません。以前は揚げ物ばかりで「茶色」の売り場でしたが、最近は生春巻きのようなエスニック風も増えてカラフルになっています。有名店監修の惣菜も出てきて、おいしくなりました(40代・印刷会社勤務)

「きょうはごちそうを探しに来ました」――40代の女性が子ども連れでカートを押している。JR京葉線・新浦安駅前の商業施設。コンビニエンスストア4個分に相当する400平方メートル超の売り場に、冷凍ショーケースがズラリと並ぶ。イオンリテールが千葉県浦安市に開いた新業態「@FROZEN」だ。

扱う冷凍食品は1500種類以上。うち半数は既存のイオンでも扱う商品。餃子やチャーハンなどが定番だが、「俺のフレンチ」といった有名レストランや専門店のメニュー、フランス発の冷凍食品専門店「ピカール」のスイーツなどが目玉になっている。

イオンリテールの「@FROZEN」(千葉県浦安市・書籍より引用)
イオンリテールの「@FROZEN」(千葉県浦安市・書籍より引用)

コロナ禍では外出自粛が呼びかけられ、家で食事する人が増えた。特に冷凍食品はストックできる上に調理が簡単で、2024年の市場規模は1兆3200億円と、この10年間で4割近く拡大した(富士経済)。冷蔵庫ではスペースが足りずに「セカンド冷凍庫」を購入する家庭も増えている。

家計調査(2人以上世帯)によると、「冷凍調理食品」に1年間に支出した金額は、2024年が平均で1万1032円と、この20年ほどでおよそ2倍になった。コロナ禍前の2019年(7817円)と比べると、わずか5年で3000円強の大幅な伸びとなった。

業界団体の日本冷凍食品協会によると、2024年の国内出荷額は家庭用が4100億円、業務用が3900億円で、家庭用が業務用を上回った。業界関係者は、共働き世帯や単身世帯が増える傾向にある中、調理の手間が少なく、時間の節約にもなる冷凍食品の需要が高まっていると見る。加熱ムラをなくすなど、各社の商品開発努力で品質も向上している。

@FROZENの開店時、イオンリテールMD改革本部長の西野克執行役員は「冷食の提供価値を上げるには品揃えを増やし、それらを展開できるだけの売り場面積が必要だ。冷食市場が外食ニーズをとらえているいま、冷凍食品だけを切り出す形で新たな成長の可能性を探る」と新業態開発の狙いを語った。

売上は当初計画を上回り、都市部を中心に約20カ所に@FROZENを出店済みだ(2025年10月時点)。イオンや@FROZENでしか買えない商品が売上の上位を占めており、西野氏は好調の要因について「独自商品の発掘・開発の継続が差別化のポイント」と分析する。