「スキップしながらやり続けたい」
そんな彼を救ったのは、小説の執筆。ラップとは異なる“言葉との向き合い方”に挑戦する過程で、再び音楽への情熱が芽生えた。
1998年12月、GAKU-MCは小説『僕は僕で誰かじゃない』(新潮社)を、翌年2月にソロデビューシングル「僕は僕でだれかじゃない-part for you-It's Gonna Be Alright-」を発売した。これらの作品には「自分だけのスペシャルを見つける」「へこんだ人の背中を押す曲でありたい」といった思いがつまっている。
「ふと出会った編集者の方に、『あなたの書く小説を読んでみたい』って言われたんです。小説なんて1ミリも考えたことなかったから、『えっ?』って驚いたんですけど、その気になって、1年かけて書き上げました。
文章を書くのが本当に楽しくて、調子がいい日には原稿用紙10枚、20枚をぱっと書ける。こんなに言葉がスラスラ出てきたのは、高校生の時以来でしたね。そして小説が完成した頃には『やっぱり音楽をやりたい』『もっともっとラップを書きたい』と思うようになっていたんです。その小説にテーマソングをつけるところから、ソロプロジェクトが始まりました」
この頃から、バンド形式でライブを展開するなど、他のラッパーにはないアプローチを導入。また、今ではキャンピングカーに音楽機材や生活用品を詰め込み、一人で全国弾き語りツアーを巡るなど、ラッパーとして誰もやったことのないことを行っている。
「同い年のMummy-D from RHYMESTERともよく話すんですけど、僕らってラッパーとして世に認知された最初の世代。同じ時期に始めた仲間には亡くなったやつはいるけど、老衰したやつはいない。つまり、最後までやりきった前例がない。だから俺らの取り組みは“ラッパーとしての道”になっていくんだろうなって感じるんです。
今の日本では、ヒップホップがメジャーになって、ドームでライブをやるようなやつもいる。だから、僕はヒップホップの本流にいる感じはしないです。ただ自分らしく、ギターを弾いたりトランペットを吹いたりしながら、誰も見たことのない景色を見続けたい。続けてこそ見える景色があると思うので、スキップしながらやり続けたいなと思っています」
GAKU-MCは、これからも軽やかに自分だけのスペシャルを探していく。
取材・文/羽田健治 撮影/廣瀬靖士
New Digital Single 「アゲナゲナゲン」
2025.11.20 Release
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