企業団体献金禁止したら「高市降ろしの暴動が起こる」
その交渉過程で、吉村代表が掲げたのが「議員定数の削減」だった。もともと維新は「身を切る改革」を掲げて、大阪で定数削減や議員の給与カットで支持を得てきた。国政でも企業団体献金の全面禁止を掲げていた。
ただ、企業団体献金の禁止は自民が絶対に呑めない。全国の県議などが党支部を財布にして企業団体献金を受けていて「禁止なんてしたら地方から高市降ろしの暴動が起こる」(自民ベテラン)という。
そのため、「自民が呑めない企業団体献金に代わる改革ネタとして定数削減を掲げることにした」と馬場伸幸前代表がネット番組で説明している。
連立合意の最終過程では、高市氏と藤田氏が毎晩のように夜中まで政策のすりあわせをしていたが、連立政権の政策合意は欧州なら数カ月はかかるとされている。
かつて自民と公明の連立交渉は1年以上続いた。たった12日間程度のスピード決着になった自民と維新の交渉では、赤坂の議員宿舎の一室で吉田松陰を尊敬するという藤田氏が「高市さん、改革のためにどうか狂ってください」と迫り、高市氏が「分かった」と応じたと、後に藤田氏が周囲に語っている。
公明幹部は「民主主義の破壊だ」
維新が掲げる議員定数削減は、衆院の比例区のみだ。現在、衆院の定数は465、小選挙区289、比例区176。現職候補がそれぞれの政党にいる小選挙区を削減するには膨大な政治パワーと調整が必要だ。
比例区だけならば、法案を通しやすいという計算も維新にあるのだろう。ただ、比例だけで50削減は、中小政党に大打撃を与える。とくに公明や共産、れいわなどは当選者が一選挙区で一人になる小選挙区では議席の獲得が難しく、比例区頼みだ。
公明幹部は「比例だけで50削減を押し通すなら、それはもう民主主義の破壊だ。うちは自民と全面戦争に入る」と身構える。
地方では、創価学会の選挙担当が立憲民主党の候補者と接触するなどして、すでに自民側に圧力をかけている。小選挙区単位では一選挙区で創価学会票はそれぞれ1~3万票あるとみられている。
この票数が連立離脱で自民候補から離れるだけではなく、相手候補に流れたら2万~6万票の逆転になり、自民は壊滅的な打撃を受けることになる。
ある九州地方の自民議員は「無理やり自民と維新で議員定数削減を突っ走るなら、学会票は相手陣営に流れていくぞ、という脅しなんだろう」と頭を抱える。













