所得が1億円を超えると実効税率が下がるのはなぜ?
今回の暫定税率の廃止により、国と地方で1.5兆円の税収減となる見込みだ。暫定税率は道路整備の財源を補うために1974年に導入され、2009年に道路特定財源から一般財源へと切り替わった。
従って、社会保障や子育て支援など幅広い行政サービスに充当されていたことになる。
高市総裁の就任前、宮沢洋一氏が自民党の税調会長を務めていた際の代替財源は、自動車関連税の増税案などが検討されていた。しかし、国民民主党の榛葉賀津也幹事長が10月31日の会見で語った通り、自動車ユーザーや自動車業界に別の形で負担を求めるのは本末転倒である。
とはいえ、日本は債務残高がGDPの2倍を超えており、先進国の中でもトップクラスだ。将来の世代にツケを回さないためにも穴埋めは必要であり、インフレに苦しむ庶民に負担がかからない増税策が必要になる。
そうした中、財源確保の案の1つとして自民党が出したのが、「金融所得課税」の強化だ。
片山さつき財務大臣は10月24日の記者会見で、代替財源の1つとしての金融所得課税の強化の是非について問われ、「予断をもってお答えできる状況にはありません」と答えたものの、一般論として「税負担の公平性、それから貯蓄から投資への流れを引き続き推進し、かつ、一般の投資家が投資しやすい環境を損なわれないようにするということが重要」と発言した。
この発言の念頭には「1億円の壁」の是正があるとみられる。
「1億円の壁」は、所得が年間1億円を超えると実効税率が低下するという現象だ。所得税の最高税率は45%だが、株式や不動産の売却益の税率は一律15%。富裕層は株の売却益や配当などの金融所得が多いため、税負担が軽くなる。
財務省は長らく「1億円の壁」と呼ばれる富裕層の不公平な税負担を是正するタイミングを見計らっていた。岸田元総理は「1億円の壁」の打破を掲げたものの、超富裕層向けのミニマムタックスの導入に留まっていた。
しかし、日経平均が5万円を超えて株高の今こそ、不公平感を解消する絶好のチャンスなのだ。











