「AIに使われる人間」にはなってほしくない

就職活動中の学生から「AIでエントリーシートをつくりました」という声を聞くことも増えてきた。AIの活用は時代の流れであり、それ自体を否定するつもりはない。しかし、そこで言いたいのは、くれぐれも「AIに使われる人間」にはなってほしくないということだ。

大切なのは、AIを使いこなし、その力を創造的に活用できる人間になること。そして、AIに任せたことでできた時間や思考の余白は、どうか自分自身のより豊かな学びや人生の選択に充ててほしい。

AIのイメージ(写真AC)
AIのイメージ(写真AC)

正直、AIが書いたレポートや論文のほうが、学生が苦心して書いたものよりも読みやすく、構成も整っているというケースが少なくない。だがそこには「個性」や「学び」は存在しない。なによりも大学卒の新人ホワイトカラーが担っていた仕事の多くは、これからAIに代替されていくだろう。

学生時代に自分がラクしたツケは、将来の仕事の場面で払うことになるのだ。企業はかつての就職氷河期に、非正規雇用者や海外の安価な労働力を使ったほうが、短期的に容易に稼げることを知ってしまっている。今後は、莫大な人材コストを投入して人間を雇うより、年間契約でAIを使い倒したほうが、よほど効率が良いことに気づいていくだろう。

だが、企業側もそうした短絡的な採用は、いずれ自分の首を絞めることにつながることを理解してほしい。当面の効率性を優先したい気持ちはわかるが、若い人間をしっかり育てていく意識とコストを理解してほしい。そして働き手である若者には、自ら学び続ける姿勢を持ってほしい。

「本気で勉強したのは、大学受験までだった」という人もいるかもしれないが、それではこの先の人生100年時代を乗り切ることは難しい。「AIのおかげでレポート作成が楽になった」と喜んでいるだけではいけないのだ。AIが優れている点の一つは、まさに「自ら学習し続ける」ことなのだから。