「家族」も「会社」も人生の依存先にできない…不確実な時代を生き抜くために求められる力とその実践的トレーニングとは
「正社員=安泰」「平均的な人生=幸せ」。そんな神話が崩れた現代社会で、企業任せ・家族任せの生き方はリスクに変わった。AIが急速に仕事を置き換える時代に必要なのは、学び続け、自分の人生の舵を自ら取れる力である。もし明日会社がなくなったら、自分は“個として”生きていけるか──その問いがすべての世代に突きつけられている。
社会学者・山田昌弘さんの『単身リスク 「100年人生」をどう生きるか』(朝日新書)より一部抜粋・再構成してお届けする。
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単身リスク#3
不確実な時代を生き抜くための実践的トレーニングとは こうした状況の中で、あえて問いたい。
「もし明日、あなたの会社が突然倒産したら、あるいはリストラに遭ったら。それでもあなたは『個』として食べていけるだけの力を持っていますか」と。
この問いは若者に限ったものではない。キャリアを積んできたと自負する中高年に対しても問いたい思考実験である。産業構造は常に変化し、今年好調な業界が、2年後には壊滅的な状況に陥っている可能性だってある。大企業神話は砂上の楼閣である。
そうした時代に、どこで、どう働き、生きていくのか。自分は異業種へ転職できるのか、あるいはフリーランスとして生計を立てられるのか。
「この機会に1カ月、旅に出よう」「半年間、語学留学してみよう」「失業中にこのスキルを習得しよう」「家族で地方に移住してみよう」。そんな妄想や仮定を、日常的に巡らせることは決して無駄にはならないはずだ。むしろ、こうした柔軟な想像力こそが、不確実な時代を生き抜くための実践的トレーニングとなる。
文/山田昌弘
『単身リスク 「100年人生」をどう生きるか』(朝日新聞出版)
山田昌弘
2025年10月10日
990円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4022953391
「人生100年時代」のリスクは何ですか?
そのリスク、本当にあなたの責任ですか?
「人生100年時代」に誰もが避けられないのは、
単身で生きる時間が長くなるリスクである。
これまでそれを覚悟して生きてきた先人はいない。
前例もなければ、ロールモデルもいない。
国民の4割が単身世帯の日本社会ゆえに問う。
自己責任の限界を突き、リスクに寛容な社会の実現を――。
家族社会学の第一人者によるリアルな提言書の誕生!
【目次抜粋】
第1章 「リスク社会」をいかに生き抜くか
人生の選択肢が増えた社会で必要なものとは etc.
第2章 「自己責任社会」をいかに超えるか
「若者支援後進国」ニッポンとは etc.
第3章 社会のセーフティネットをいかにつくるか
21世紀型「家族のリスク」とは etc.
第4章 「人生100年時代」のターニング・ポイント
「年金か、生活保護か」中間層のリスクとは etc.
第5章 「幸福な長寿社会」のつくり方
「人生100年時代」の幸せをどう描くか etc.