最後の砦としての「家族」

もっともこの「平均値」には、初婚の中高齢者の結婚も含まれている。そうした層を抜いた初婚年齢でもっとも多いのは、女性は26歳である。かつて女性はクリスマスケーキに喩えられ、24歳を過ぎると「嫁のもらい手がない」などと言われたものだが、現代(特に都心部)の大学卒の女性は、25歳以降に結婚するのがふさわしいと考えている。

一方で学歴が高くない女性ほど、若年での結婚・出産が高い傾向が見られる。早く社会に出ているから、早く結婚したい気持ちも出るのかもしれない。だが高校卒業したて、あるいは在学中に出産すれば、キャリアとしてはアルバイト程度の経験しか積んでいないことになる。そうした女性が出産・育児後に社会に〝復帰〞しようとしても、働き先はパートかアルバイト、非正規雇用の道しかない。

あるいは若年のまま結婚・出産に至った男女の場合、まだ年若い父親が、もう一度人生を生き直そうと母子の元から去るケースも少なくない。取り残された母親は、幼い子を抱えて、どんなキャリア構築を目指せるだろうか。

日本では、シングルマザーが無職のまま子育てをできるようなサポート体制は敷いていない。必然的に彼女たちは働かなくてはいけないが、働いている間の子どもの面倒は誰が見るのか。保育園などを利用しつつも、いざとなれば頼るべきは母親の両親であることが多い。離婚家庭でも、離婚後、母親は実家に身を寄せることが多い。ここでも最後の砦が「家族」になっていることに注目したい。

文/山田昌弘

『単身リスク 「100年人生」をどう生きるか』(朝日新聞出版)
山田昌弘
『単身リスク 「100年人生」をどう生きるか』(朝日新聞出版)
2025年10月10日
990円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4022953391

「人生100年時代」のリスクは何ですか?
そのリスク、本当にあなたの責任ですか?

「人生100年時代」に誰もが避けられないのは、
単身で生きる時間が長くなるリスクである。
これまでそれを覚悟して生きてきた先人はいない。
前例もなければ、ロールモデルもいない。
国民の4割が単身世帯の日本社会ゆえに問う。
自己責任の限界を突き、リスクに寛容な社会の実現を――。
家族社会学の第一人者によるリアルな提言書の誕生!

【目次抜粋】
第1章 「リスク社会」をいかに生き抜くか
人生の選択肢が増えた社会で必要なものとは etc.
第2章 「自己責任社会」をいかに超えるか
「若者支援後進国」ニッポンとは etc.
第3章 社会のセーフティネットをいかにつくるか
21世紀型「家族のリスク」とは etc.
第4章 「人生100年時代」のターニング・ポイント
「年金か、生活保護か」中間層のリスクとは etc.
第5章 「幸福な長寿社会」のつくり方
「人生100年時代」の幸せをどう描くか etc.

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