盟友・岡部たかしとの再タッグの裏側
――今回、ヒロインの父・司之介役を演じる岡部たかしさんは、演劇ユニット『切実』を共に主宰されている長年の盟友でもいらっしゃいますが、岡部さんと朝ドラをご一緒されるお気持ちをお聞かせください。
妙な言い方ですが、これが岡部にとって初めての朝ドラで、ヒロインの父・司之介役に抜擢されていたとしたら、僕もかなり気合が入っていたと思います。でももう『虎に翼』(2024年度前期)や『ブギウギ』(2023年度後期)など印象的な朝ドラに多数出演してますし、『情熱大陸』にも出て、一回売れ終わったタイミングなので、僕はそこまで感慨深さはないですね(笑)。…といいながら、めちゃくちゃうれしいですよ。ずっと一緒に演劇をやってきた仲ですしね。
――岡部さんが出演することで、脚本にはどのような影響がありましたか。
キャスト陣を検討している段階で、制作サイドの方から「ヒロインの家族の中に、ふじきさんをよく知っているキャストを入れませんか?」と提案されたんです。ただ、岡部はすでに『虎に翼』でヒロインの父役を演じていたし、断られるだろうなと思っていました。オファーを受けてくれたことで、松野家の雰囲気もだいぶ明るくなったし、筆の進み具合もいい。当て書きができるところが一番助かっています。
――今作でヒロインの父を演じる岡部さんに、どんな役割を期待されていますか。
演劇でも岡部によく渡している役柄が「良い人で悪気はないんだけど、すごく失礼な人」というものです。無自覚な言動により、ちょっとした悲劇を生むけど、みている人からしたら可笑しい。
今作では、明治時代に入ってもなお武士の生き方を貫いている人々が登場します。本人は至って真面目に生きているし悪いと思っていないけど、現代の人からみると「ちょっとそれはないんじゃない」って可笑しさがある。岡部が演じる司之介に限らず、それぞれが今までの生き方を変えることって難しいけど、それが徐々に化けていく物語でもあるんです。
――最後に、第5週からついに小泉八雲がモデルのヘブンが登場しますが、今後の見どころを教えてください。
ヘブンが松江に来ることで、これまでと雰囲気もガラッと変わります。松江のいろんな名所も出てきますし、出演者もどんどん増えてきますので、トキとヘブンの2人の物語の展開を楽しんでいただければ。
#前編「脚本家が語る『何も起こらない物語を描く』の真意とは…」
取材・文/木下未希













