史実とは異なる⁈ ヒロインの最初の夫・銀二郎に込めた想い
――第4週「フタリ、クラス、シマスカ?」では、ヒロインの最初の夫・山根銀二郎が、追い詰められた末に出奔するという展開を迎えましたが、銀二郎についてはどのようなこだわりを持って書かれたんでしょうか。
トキのモデルの小泉セツさんの最初の夫は前田為二さんという方で、婿に入ったものの出奔してしまうのは史実通りです。ただ、私が読んだ資料によると、2人の結婚生活に関する記述はほとんどないんですよね。
記されていたのは、家訓を気にするセツさんの祖父と為二さんの反りが合わなかったり、あまりの貧しさに出奔したということだけです。そしてセツさんが出奔先まで会いにいくと、「絶対松江には帰らないし、なんなら来てくれるな」という拒否感を示され、セツさんはその帰り道、「もう松江には帰れない」と川に身投げしようとしたという記述も残っていました。
――史実としてはかなり厳しい現実が残されている一方で、ドラマの銀二郎はどこか温かみのある人物として書かれていました。
史実通り書くと、あまりにもかわいそうですし、それが現実だったとしても、僕は「一瞬でも、2人の間には楽しく幸せな時間が流れていてほしい」という思いを込めて、銀二郎を愛情深くて真面目な人として書きました。シジミ汁を初めて一緒に飲んだシーンや、怪談好きを認めてくれる人と出会えた喜びや嬉しさを書き、映像でも表現されていました。
松江では2人だけの時間がほとんど持てなかったので、出奔先で初めて夫婦らしい時間を過ごせる。僕はそのシーンがすごく大好きで、結果、2人は別れてしまいますが、お互い好き同士だったけど別れたみたいに書きたかったんです。
――銀二郎を演じた寛一郎さんの演技には、どのような印象を受けましたか。
寛一郎さんは、この役柄の影響もあるのか、どこかポーカーフェイスで感情を大きく表に出さない方です。台詞回しにもあまり抑揚をつけず、静かなトーンで語るのですが、ふっと笑う瞬間がある。その一瞬がとても魅力的で、僕はそういうタイプの役者さんがすごく好きなんです。寛一郎さん演じる銀二郎をずっと見ていたい…それくらい印象の残る存在でした。













