解散総選挙に立ちはだかる壁 

確かに、高市氏の周辺では「来年1月の通常国会の冒頭で解散すべき」との声も出ている。無論、それで自民党単独で過半数を取り戻すことは難しいだろう。選挙後は、いずれにしても、連立のパートナーが必要になってくるとみられる。

「選挙後の議席数次第ですが、そこで、より高市氏と経済政策が近しい、国民民主と連立を組み直すというパターンも考えられる。というのも、高市さんは総裁選で診療報酬や介護報酬の引き上げを主張していましたが、これは財政の考えを転換しないとできない。

“身を切る改革”を信条とする維新と組んでいる限り、こうした政策の実現がなかなか難しくなるという見方もあります」(前出・自民党ベテラン議員)

高市早苗総裁(自民党広報Xより)
高市早苗総裁(自民党広報Xより)

つまり、維新との連立は数ヶ月で終わるという“仰天シナリオ”もあるというのだ。ただし、解散総選挙をするにしても自民党につきまとうのが、自民党派閥を巡る裏金事件である。

高市氏は総裁選期間中からいわゆる裏金議員の起用に積極的な立場をとってきた経緯がある。実際、新執行部では、旧安倍派幹部の萩生田光一元政調会長(62)が、幹事長代行に起用された。

参院自民党でも、旧清風会(参院安倍派)の山本順三元国家公安委員長(70)が参院政策審議会会長に、同じく岡田直樹元内閣府特命担当相(63)が参院幹事長代行に就任するなど、裏金事件への関与があった面々が執行部入りしている。

高市新体制の面々(自民党広報Xより)
高市新体制の面々(自民党広報Xより)

「萩生田氏の起用は、公明党の連立離脱の一因になったとも指摘された。だが、高市氏もさすがに危機感を持ったのか、参院自民党からの閣僚人事について『今回は旧安倍派の方々を大臣にするのは難しいわね……』と周辺に漏らしていた。

裏金問題の再発防止策を含めて、もう一度何らかの整理をつけない限り、解散総選挙が難しい面があるのは事実です」(高市氏周辺)

そもそも維新と連立を組んだとはいえ、与党が衆参で過半数を占めるまでには至っていない。首班指名選挙を巡っても、高市氏自身が日本保守党の百田尚樹代表(69)や、参政党の神谷宗幣代表(48)と面会し、協力を呼び返るなど、多数派工作はさまざまなかたちで続いている。

その一環が、NHKから国民を守る党(NHK党)の齊藤健一郎参院議員(44)が自民党会派に入ったことだ。

立花党首に会派入りの報告をした齊藤健一郎氏(本人Xより)
立花党首に会派入りの報告をした齊藤健一郎氏(本人Xより)
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「もともと齊藤氏と自民党の西田昌司参院議員(67)は個人的に親しかったそうです。齊藤氏も行き場がなくなっており、2週間ほど前に、西田氏に会派入りの相談をした。その後、西田氏が、石井準一参院幹事長(67)に相談し、松山政司参院会長(66)が了承して決まったという経緯です。

一応、会派入りに際しては西田氏が齊藤氏に『(N国の)立花孝志党首のような無茶なSNSの使い方はしてないな?』と確認したとのことでしたが、一部では物議を醸しています」(参院自民党関係者)

自民・公明両党の蜜月は野党時代も含め、実に26年にわたり続いた。果たして、今回の“自維連立”はどれだけ続くのか。その先行きは、いまだ流動的と言えそうだ。

取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班