「指摘された名前を見ると妙に納得してしまう面もある」の声も

そんななか、永田町をざわつかせているのが「造反者リスト」の怪文書だ。来たる首班指名で野党候補に投票する自民党議員が26人いるという憶測が飛び交い、その氏名を列挙した紙が回覧されたのだ。

噂の拡散に拍車をかけたのは立憲民主党の有田芳生衆院議員だ。15日、有田氏は自身のXで「造反議員26人」と題した実名入りの怪文書を公開し、「実際には具体的にさらに進んでいます」とコメントした。

永田町をざわつかせている怪文書「造反者リスト」
永田町をざわつかせている怪文書「造反者リスト」

名指しされた佐賀1区選出の岩田和親衆院議員が自身のXで、有田氏のツイートを引用し、「根拠のないSNS情報に振り回されないようお願いします」と反論。

国光文乃衆院議員(茨城6区)も即座に「根拠不明ですが、あり得ません」と反論し、「自民党は責任政党。民主的に選ばれたリーダーを熟議の上、結束して支えます」と投稿した。

同様に名前があった三谷英弘衆院議員(神奈川8区)も、「造反しませんっ」と火消しに走った。

「リストには総裁選で小泉進次郎氏の陣営で広報の責任者を務めた牧島かれん元デジタル担当相の名前もありました。牧島氏も『根拠不明で、あり得ないことです』とXで否定しています。地盤が固くない若手議員の名前があるいっぽうで、閣僚経験もあるような当選回数を重ねたベテランの名前もあげられています」(前出の政治部記者)

牧島かれん元デジタル担当相(牧島かれん公式サイトより)
牧島かれん元デジタル担当相(牧島かれん公式サイトより)

永田町内では政界の混乱に乗じて流された「悪質なデマ」と評する声が圧倒的だが、「指摘された名前を見ると妙に納得してしまう面もある」と明かすのは、あるベテラン議員の事務所関係者だ。この関係者は声をひそめてこう明かす。

「まったく迷惑な話だが、名前が挙がった選挙区を見ると『よく調べたな』と感心してしまった。というのも、ここに上がった選挙区はいずれも公明票が多いところ。なかには選挙区での当選が叶わず、比例復活でようやく議席にありついたゾンビ議員もいる。

いずれも公明の連立離脱が死活問題になる面々で、今回の事態を招いた高市氏に怨み骨髄という議員もいるのは否定できない」

怪文書は一夜にして拡散されたが、当の自民党内では「誰が仕掛けたのか分からない」と戸惑いが広がる。

リストには他にも複数のシナリオが書かれていた。

1つ目は自民党議員が196人全員高市氏に投票し、野党の意見が分かれて高市総理が誕生するパターン。

2つ目は国民民主党の玉木雄一郎代表が野党の統一候補となり、立民、維新、国民の票を合わせて高市氏を上回るという筋書き。

3つ目は公明党の斉藤鉄夫代表を首相候補に担ぎ出し、自民196票に対して野党の234票で勝つという驚きのシナリオだ。

公明党代表の斉藤鉄夫氏(本人Xより)
公明党代表の斉藤鉄夫氏(本人Xより)
すべての画像を見る

造反リスト騒動は、SNS社会が政局を翻弄する危うさを浮き彫りにしたが、国民の間では「誰が本当のリーダーか」を巡る議論が盛り上がり、党内の結束のもろさが可視化されたとも言える。

自民党内では、怪文書の出どころを探る動きもあり、前出の関係者は、「選挙前に敵と味方をあぶり出そうという狙いではないか」とささやく。

公明党なき新体制で、高市総裁には物価高や安全保障といった国家の難題に加えて、党内の不満や造反の火種をどう抑え込むかのタスクも課される。造反リスト騒動は単なる怪文書に終わるのか、それとも本当の反乱の予兆なのか。

自民党が再び安定多数を確保し、国政を主導できるかどうかは、これから始まる数週間の舵取りにかかっている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班