派閥均衡を無視した人事が党内の溝を深める

「私の責任。不徳のいたすところ」。14日に開かれた両院議員懇談会で高市総裁は居並ぶ議員を前に神妙な面持ちで頭を下げた。

21日に召集される臨時国会の冒頭で行われる見込みの首相指名選挙について、「ぎりぎりまで、合意できる政党と一緒に歩めるよう努力する」とも宣言。同時に、「皆さんの力もお借りしたい」と悲痛な訴えを口にした。

14日に開催された両院議員懇談会(自民党広報Xより)
14日に開催された両院議員懇談会(自民党広報Xより)
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だが、会場の空気は重かったという。

「出席議員から公然と執行部を批判する声は上がりませんでしたが、オフレコ取材で『だから言わんこっちゃない』と高市新総裁の対応への不満を漏らす議員は少なくありませんでした。

今のところ、表立った『高市おろし』の声は上がっていませんが、『新総裁が高市氏でよかったのか悔やまれてならない』『一度壊れたものは元には戻らない』と公然と高市氏を批判した農水族のベテラン・野村哲郎元農相のように今後、党内で声を上げる勢力が膨らんでいく可能性もあります」(全国紙政治部記者)

高市早苗新総裁と鈴木俊一幹事長(自民党広報の公式Xより)
高市早苗新総裁と鈴木俊一幹事長(自民党広報の公式Xより)

日経新聞の試算では、次の衆院選で公明党の選挙協力がなければ自民候補の2割が落選するという。あるベテラン議員は、「ただでさえ少数与党なのに、これで過半数確保のハードルが一気に上がった」と表情を曇らせた。

不満の矛先は人事にも向かっている。

「あれだけ露骨な論功行賞で党役員人事をやられたら、ついていくのが馬鹿らしくなるでしょう。麻生太郎元首相を副総裁に起用し、その義弟の鈴木俊一氏を幹事長に据えたのをはじめ、新設された副総裁特別補佐にはコロナ禍の銀座クラブ通いで『銀座三兄弟』と呼ばれた松本純元国家公安委員長が就いた。派閥均衡を無視した人事は小泉進次郎農相を支えたグループの反発を招き、党内にも溝が広がっています。

本来なら連立崩壊の衝撃を受けた今こそ一致結束すべき局面なのに、幹事長や副総裁がベテランで固められ、若手やリベラル派は肩身が狭いのが実情です」(同)

高市新体制の面々(自民党広報Xより)
高市新体制の面々(自民党広報Xより)

高市氏自身は11日から13日の3連休、東京・赤坂の衆院宿舎に“ひきこもり”、党幹部との連絡は官房長官内定者の木原稔氏に任せきりだったともされる。気配を消す総裁に、周囲からは「党幹部などとの連携は大丈夫なのか」との不安の声も漏れたという。