名門中学に入学後、成績は急降下し“深海魚”状態に
晴れてA中学に入学後、タツヤさんは最初のテストで1クラス40人中26位という順位を告げられた。今まで勉強は得意だったが、同じレベルの集団に入ったことで真ん中くらいの成績になったのだ。そして、それをピークにタツヤさんの成績は落ちていく。
「1年生の夏前のテストでは、40人中36位でした。学年での順位は出ないのでわからないのですが、おそらく学年でもかなり下の方だったと思います」
さらに不運が続く。落ち着いた校風で選んだ中学だったが、偶然同じクラスにやんちゃな生徒がいたのだ。
「成績の順位は貼り出されないのですが、成績が悪いことってなんとなく伝わるんですよね。そこから『勉強ができない奴』として、やんちゃな生徒にいじられるようになりました。だからといって、言い返すわけでもなく『見返してやる!』とやる気になるわけでもなく。逆にやる気は下がって、成績はどんどん落ちていきました」
小学校までは「成績優秀者」だったタツヤさんだったが、あっという間に「補習の常連組」という立ち位置になった。
どの教科の成績も伸び悩んだが、入学後に特に足を引っ張ったのが英語と算数だった。週末は母親が英語を教えてくれたが、成績が上がることはなかった。
「英語と算数は授業内容が理解できなくて、うわの空だったと思います。そうこうしているうちに、得意だった社会も点数が取れなくなっていきました。それでますますやる気が下がるという悪循環に陥っていきました」
悪い成績を取るたびに母親に怒られた。毎日怒られ、いつしか怒られることにも慣れてしまった。
「常に下から順位を数えた方が早くて、成績が悪い状態が自分にとっての『普通』になっていました。悲しいとか辛いという感情すらなく、ただ無気力。今思えば、そのころ自己肯定感はかなり下がっていたと思います」
そして、一度下がったモチベーションは、いつまでも上がらなかった。