接続詞は「ないと道に迷うシーン」でだけ使うべき

さて、ではこのルールをすべての局面に適応すれば、わかりやすく、素敵な文章になるのでしょうか。私は違うと思います。

接続詞は不要なものは削除しつつ、「ないと道に迷うシーン」でだけ使うべきなのです。道路案内でも100メートルごとに「このまま直進」と出たら煩わしいように、「そのままでOK」を示す順接は、省略可能なケースが多いのです。

「この書籍は面白い。すごく売れています」。接続詞を排除しましたが、これで道に迷う人はいません。では、逆接はどうでしょう。「この書籍は面白い。松井某は面白味に欠けます」となってしまっては、文章として言いたいことが不明瞭ですよね。「この書籍は面白いんだけど松井はちょっとなぁ……内容はまあ面白いんだけどさぁ」という書き手の逡巡が、道しるべとしての「しかし」に込められていたわけです。

ふたつ前の段落の冒頭で使った「さて」はどうでしょう。これは「転換」の接続詞です。これまでの流れを汲んで次の話題に行く区切りの役割で、順接の意味が強いため、省略できます。

では、もうひとつの転換の接続詞「ところで」はどうか。そこで区切りがついたという気持ちを必ずしも感じさせないワードで、「ところで、その考え方は間違っていないでしょうか?」など、やや逆接のニュアンスを含みます。もしくは「まったく違う話題(予想できない話題)へ切り替える」合図でもある。その意味で、「ところで」の削除は難しいのです。

流れに乗っている文章では接続詞を省略してよい/予想外の文章をつなぐ場合は接続詞が必要。これが大まかなルールです。文章生成AIを用い、出力された文章を結びつけて長文にする場合、こうした接続詞の存在が、その文章の読みやすさを左右する道案内になるのです。これは、ここ数年で得られた新しい「気づき」でした。

このイラストのように「だから」「したがって」は、あるとくどいケースが多いです。多用することで、文章から軽やかさ、滑らかさが失われ、文章が妙に暑苦しくなることもあります。文章生成AIで生成した文章を長文にする際は、順接の接続詞はリズムを整える程度の利用が吉でしょう。ただし本文で触れた通り、路線変更の「逆説」は削除しないように。文章が途端に破綻することになります(イラスト/『生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術』より)
このイラストのように「だから」「したがって」は、あるとくどいケースが多いです。多用することで、文章から軽やかさ、滑らかさが失われ、文章が妙に暑苦しくなることもあります。文章生成AIで生成した文章を長文にする際は、順接の接続詞はリズムを整える程度の利用が吉でしょう。ただし本文で触れた通り、路線変更の「逆説」は削除しないように。文章が途端に破綻することになります(イラスト/『生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術』より)
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■まとめ
・AIで生成された文章はぶつ切れ。長文を作るためには「接続詞」が重要となる。
・接続詞は道しるべ。これを見れば、文章はどんな方向に進むのかわかる。
・流れに乗っている文章では接続詞は不要。予想外の文章をつなぐ場合は接続詞が必要。

文/松井謙介

『会社や学校では教えてくれない 文章力向上の鉄板ルール 生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術』(マイナビ出版)
松井謙介 (著)
『会社や学校では教えてくれない 文章力向上の鉄板ルール 生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術』(マイナビ出版)
2025/9/24
1,980円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4839990275

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