空の巣症候群になりやすい人の4つの特徴とは
そもそも「空の巣症候群」とはどんな症状を引き起こすのか。近畿大学総合社会学部(心理系専攻)の塩﨑麻里子教授に話を聞いた。
具体的な症状としては、喪失感や空虚感、苛立ちなどの心理的症状、睡眠障害や食欲不振などの身体的症状、また引きこもりやその逆の過活動、子どもへの過干渉などの行動的症状もあげられるといい、
「子育て終了時期は、中年期と重なることが多く、その年代特有の心理社会的、身体変化によって引き起こされる不調も根底にあります」(塩﨑教授、以下同)
とのことだった。実際、「空の巣症候群」になりやすい人にはどんな特徴があるのか。塩﨑教授によると、「主に4つの特徴があげられる」という。
まず一つ目が、「親の役割が生活の中心である人」だ。
「私たちは家庭以外にも、職場や趣味などさまざまなコミュニティの中でそれぞれの役割を担っています。『親』以外の役割が充実している人は子育て終了時の役割消失の影響が少ないですが、逆に『親』の役割が人生の中心である人は、その喪失感や影響力は大きいでしょう」
二つ目は、「子どもと心理的に密着している人」だ。
「日本人の母子関係は、心理的距離が近く、その境界線があいまいとも言われています。子どもを自身と一体化して捉えている場合は、子どもの自立自体が自身の存在価値の否定につながり、不適応を引き起こしたり、自立を引き留めるような行動をとってしまうこともあります」
三つ目は、「他のライフイベントも重なった人」だ。
「人間は一つだと対処できることも、複数のストレスフルな出来事が慢性的に重なると対処しきれなくなることが多いです。親の介護、家族の健康問題、職場での立場の変化や解雇などのライフイベントが重なると不適応症状が生じやすいです」
四つ目は、「社会的ネットワークが少ない人」だ。
「子育てが忙しい時期から、ひと段落する『ポスト子育て期』への移行は、家族にとってさまざまな変化を経験することになり、その際に友人や近所、親族とつながりがあることは大きな人生の資源になります。また夫婦関係が不安定だと、子どもが巣立ったあとの人生に希望や意味を感じることができず、不適応に陥りやすいです」