「田久保さんが辞意を撤回してから、みんなシーンとなったんです」 

地元や、東京のメディアで伝えられる「街の声」が市長非難一色となる中、市長室を訪ね、応援の気持ちを伝えたマダイの一本釣り漁師・石井泉さん(77)は支持の理由をこう話す。

「田久保さんを応援する理由は突き詰めれば、彼女にはしがらみがないということ。新図書館建設を進めたいことが明白な市議会にしてみれば、“ヨソ者”である田久保さんが市長になったことが許せないんだと思うよ。

卒業の真偽は、30年前のアナログな事務手続きで手違いが起きた可能性があるし、発言の撤回が悪いとみんな言うけど、国会議員なんて前言を翻すことは日常茶飯事。田久保さんのように叩かれるのは異常だと思います。

ヌクヌクとした伊東の政治に田久保さんのような人が出てきたことはうれしいし、私の周りには表には出ないが彼女を支持する人はいっぱいいますよ」(石井さん)

9月1日、田久保眞紀市長の不信任決議案を全会一致で可決した伊東市議会(撮影/集英社オンライン)
9月1日、田久保眞紀市長の不信任決議案を全会一致で可決した伊東市議会(撮影/集英社オンライン)

前出のAさんも、学歴詐称問題が起きても伊豆高原一帯では田久保市長への支持は固かったとみる。

しかし「特に地元メディアが一方的なのですが、田久保さんサイドの声は一切伝えずに最初から犯罪者扱いで、そうした報道にしか触れてないから地元でも支持する人は減っていると思います。

それと、この街は静かなところなのに、それがいきなりこんな大騒ぎになって、毎日毎日じゃないですか。そうしたら、それ自体が嫌だっていう人もいると思います」と指摘する。

9月1日、伊東市議会本会議で不信任決議案が可決された後、帰り支度をする田久保眞紀市長(撮影/集英社オンライン)
9月1日、伊東市議会本会議で不信任決議案が可決された後、帰り支度をする田久保眞紀市長(撮影/集英社オンライン)

 伊豆高原の別の住民のCさんも、地域の変化を証言する。

「私も除籍を指摘した文書が送られたりしたのは田久保さんの足を引っ張る大きな動きがあるのではないかと思いますし、騒ぎが起きた初期は『(田久保さんを)応援しなきゃ』というあいさつもみんなしてたんです。

7月に田久保さんが“一度辞職してもう一回選挙に出る”と言った後だって『5月の選挙では前市長に入れたけど、今度は田久保さんに入れる』という人までいたと聞きます。

でも、田久保さんが辞意を撤回してから、みんなシーンとなったんです。今は人が集まる場所で彼女のことを口にするのは“タブー”になっています。

メガソーラー反対で田久保さんと一緒に動き、家の前に田久保さんのポスターを貼っていた人も外したりしています。支持する人は多いと思っていましたが、今はもうわからなくなりました」(Cさん)

田久保眞紀市長の机(撮影/集英社オンライン)
田久保眞紀市長の机(撮影/集英社オンライン)
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圧倒的に不利とみられた選挙を市政の転換を求める声に押され勝ち抜いた田久保市長。だがわずか3か月で市民は市政変革への期待を口にすることもできない空気になった。

この異常な事態をどう終息させるのか。出直し市長選か議会解散か、市長の決断のリミットが近付いている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班